倹約家も浪費家も「老後破算」の恐れあり
ニューズウィーク日本版 / 2016年3月22日 16時54分
実は、2000年代に入って、家計は毎年のように、増税や社会保険料アップの嵐にさらされ続けています。(中略)年金保険料ひとつ見ても、毎年約1万円ずつ値上がりしていて、この10年で10万円以上値上がりしています。2011年から16歳未満の子どもの扶養控除が廃止になったので、年収800万円の長谷川さんのご家庭の場合、これだけで年間約22万円の負担増になっています。(25~28ページより)
年金保険料のアップと扶養控除の廃止だけでも、この10年で年間約22万円以上の負担が増えることに。さらに消費税のアップや復興増税まで加えると、年間50万円以上の負担増となる。しかも2016年夏の参議院選の選挙対策で配偶者控除の廃止は先送りになったものの、選挙後に廃止の方向へ進むのは必至。そうなると、さらに10万円の負担増ということになる。
それに加えて会社の経費が削減されるとなると、たしかに負担の大きさは火を見るより明らかである。そんななか、「住宅ローン」「教育費」「老後費用」という3つのお金のハードルを飛び越えていくことが先決だと著者は提言する。
さて、以後もこのように現実的な話が展開されていくのであれば、それはそれで納得もできる。しかし読み進めていくと、問題がそれほど単純ではないこともわかってくる。ここから先の記述においては、「隠れ貧困」にこびりついている面倒な問題が明らかにされているからである。
バブルを知らない世代が、質素な暮らしを続けながら貧困に耐える一方、かつてバブルを経験してきた50歳前後、いわゆる「アラフィフ」の破綻した金銭感覚が悪い影響を及ぼしているという事実である。では、なぜ50歳前後には「貯められない」主婦が多いのか。著者はその答えが、彼女たちの青春時代にあると指摘する。
今、50歳前後の女性たちが社会人になったのは、バブル真っ盛りの1985年から1990年。ボーナス袋が、1万円札の厚みで立った時代です。高級ホテルが常に満員で、酔っぱらいで溢れ返った銀座では、そこかしこで1万円札を振りながらタクシーを呼ぶ姿が見受けられました。OLが、ランドセルのように30万円以上するヴィトンやシャネルのバッグを持ち、ブランド品を身につけていないと恥ずかしいような空気がありました。(75ページより)
あいにく恩恵こそ受けなかったものの(受けなくて本当によかった)、あの時代の端の方で、彼らを「気持ち悪いなぁ」と思いながら眺めていた現在53歳の私としては、この考えには大きく納得できる。
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