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香港・マカオ4泊5日、完全無料、ただし監禁――中国「爆買い」ツアーの闇

ニューズウィーク日本版 / 2016年3月24日 15時49分

 また、日本にもそうした動きは広がっている。香港・マカオの成功事例を各地にコピーする、ブラックビジネスの水平展開だ。

 例えば上海から韓国・済州島、日本・福岡を回る4泊5日の客船旅行は2000元(約3万5000円)を切る低価格で提供されている。宿泊費、食事代込みだけにびっくりするほどリーズナブルだ。だが低価格旅行に「騙された」という中国人消費者の声はすでに相当数に増えており、中国メディアもぼったくり日本旅行について取り上げる機会が増えている。

【参考記事】日本企業が「爆売り」すれば、爆買いブームは終わらない

 低価格ツアーの客が連れ込まれる免税店は、「日本人立ち入り禁止」すなわち外国人ツアー客しか入れない。他の店と値段を見比べたりできない空間で、健康食品やら化粧品やら家電やらを大量に買わされることになる。

 いい買い物をしたと喜んでいる人もいる一方で、後になってから、購入した製品がまったく無名のブランドで本当に日本企業が製造したかどうかすらも分からないと憤っている人も多い。ネット掲示板やSNSを検索すると、怒りの書き込みがずらりと並ぶ。

 日本ならば騙されない、日本にはニセモノは売っていないはず――中国人が持つ日本ブランドをうまく利用してあこぎな商売をしているわけだ。こうしたツアーは客も外国人ならば、ぼったくり免税店の経営者やガイドも外国人ということで、日本人の目に触れる機会は少なく話題になっていない。日本当局の動きも鈍いようだ。

 しかし、あこぎな業者が利用し食いつぶしているのは日本のブランド価値なのだ。日本人が気づかないうちに、日本に対する信用がぼろぼろになっているということも十分考えられるのではないか。日本におけるブラック旅行ツアーのシステムが完成し、旅行客が殴り殺される事件が起きる前に、取り締まりが必要ではないだろうか。

[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。


高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)


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