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【再録】J・K・ローリング「ハリー・ポッター」を本音で語る

ニューズウィーク日本版 / 2016年3月28日 17時35分

 それでよかったと思う。自分の子供を実名で自分の本に登場させるなんて、いいアイデアじゃない。私のジェシカが「ハリー・ポッターの妹」として一生を送るなんて、考えただけでゾッとする。

――第4作はシリーズの重要な節目になる?

 そうね。プロットの展開からいけば、とても重要な作品よ。

――作品の長さでも一番?

 いいえ。いちばん長いのは第7巻になりそう。きっと百科事典並みになるわ。それでお別れだから。

 いちばん苦労した作品であることは確かね。『秘密の部屋』にも手こずったけど。不思議なもので、いちばん苦労したこの2作品が一番のお気に入りなの。

――書くことで、あなたは変わっただろうか。

 ええ。ずっとハッピーになった。作品を書き終えるたびに、私はどんどんハッピーになる。『ハリー・ポッター』は、完成できた初めての小説。あと一息だった作品は、それまでに2冊あるけど。

 書くことだけが自分の才能だと思ってたから、それが証明できてうれしい。私は、ものを書くこと以外にはほとんど役立たずの人間なの。平凡な教師で、教えるのは好きだったけれど、事務仕事は苦手だった。誇れることじゃない。

――前に書いた2作品とは?

 両方とも大人の本。詩を除いては、何でも挑戦した。詩も書いたけど、自分でもクズだってわかったから(笑)。皮肉なもので、児童書は考えたこともなかった。いつも大人向けの話を考えていた。

――でも90年に、マンチェスターからロンドンに向かう列車の窓から野原の牛を見ているうちに、ハリーのイメージが浮かんできた。本当に魔法みたいな話だが。

 そう、本当にね。アドレナリンが大量に流れるのを体で感じたわ。いいアイデアが浮かんだサイン。体で感じるの。そのときは今までにないぐらい強烈だった。

 ハリーのイメージが怒濤のように浮かんできた。自分が魔法使いだって知らない男の子。おまけに、おでこには奇妙な傷跡......。どうして自分が魔法使いだって知らないの? その傷はどうしたの? 答えを見つけていかなくちゃって思った。すべてを創作するって感じじゃなかった。

――このシリーズの大きなテーマの一つに、子供たち、とくに普通の子供たちの無力さがある。

 ええ、そのとおり。

――それが若い読者に支持される理由の一つなのか。

 だから、いつでも、そしていつまでも、魔法や秘密のパワーを見つけたり、日常で実現できないことを描いた物語が存在する。大人も同じ。心の中の小さな声が、世の中をあるべき姿に変えられたらって願っている。

 大人になることは、自分の無力さを自覚することでもある。子供は「大人になればきっと」って思うけれど、大人になったとたんに物事はそれほど簡単じゃないって気づく。むずかしくても、トライしてみる価値はあるのだけど。

――「ハリー・ポッター以後」のあなたは何をしているだろう?

 まだ何も決めていない。でも、執筆活動を続けているのは確かね。何も書かないでイライラせずにいられるのは、せいぜい1週間が限度。一種の麻薬よ。

 アイデアはある。全部、クズみたいなものかもしれないけど。


※このインタビューを行った記者の回顧録はこちら:【再録】J・K・ローリングはシャイで気さくでセクシーだった

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[2006.2. 1号掲載]


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