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日本男子「草食化」の背景にある経済格差

ニューズウィーク日本版 / 2016年3月29日 15時30分

 政治家や著名人の不倫報道が世間を騒がせているが、現代の若者は総じて恋愛には淡白だ。

 大学生の性交経験率をみると、男子はピークの1999年で62.5%だったが、2011年では54.4%に下がっている。女子はピークの2005年の61.1%から2011年の46.8%と、この6年間で15ポイント近く低下している(日本性教育協会『青少年の性行動調査』)。若者が「草食化」したと言われる変化だ。

 最近では、恋人のいない若者も増えている。この点については国際的な比較データがあるので、国別に比較してみよう。<図1>は、主要国の10代と20代の若者に、婚姻状況・恋人の有無をたずねた結果をグラフにしたものだ(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年)。図中の「瑞」はスウェーデンを指している。



 日本では、10代の9割、20代の6割弱が未婚で恋人もいない。この比率は、他国と比べると格段に高い。ドイツやフランスでは、10代でも半分が結婚しているか、交際中の恋人がいる。主要国における日本の特異性は際立っている。

 恋愛に消極的な若者が増加している要因については諸説がある。よく指摘されているのは、SNSで交際中の行動が周囲の人に筒抜けになるので、色々と気を遣わなければならないことだ。「恋愛なんて面倒」という心理の根底には、こうした束縛に対する抵抗があるのだろう。

 また過度の親子密着により、性的自立に遅れが生じているためではないか、という説もある(「親子でお風呂、抵抗感なし? 恋愛に消極的な若者たち」朝日新聞、2016年1月6日)。少子化の進行に伴い、このような傾向が強まっているとみられる。欧米諸国では見られない日本特有の現象なので、<図1>の国際差の説明としてはこちらの方が有力かもしれない。

 しかし、それだけではないだろう。近年の若者の経済状況の変化と関連しているのではないか。現在では雇用の非正規化が進んでいるが、婚姻状況や恋人の有無は、正規と非正規の間で大きな差異が生じている。日本の20代男女を正規・非正規に分けて回答の分布を見ると、<図2>のようになる。横幅の大小で、2つの群の比重も表している。



 男性では、恋人がいない人の割合は正社員では5割だが、非正規職員では8割にもなる。家族を養う経済力を男性に求める日本のジェンダー観念の影響が見てとれる。男性の場合、年収が高いほど既婚率は高い(女性はその反対)。【参考記事】「生涯未婚率は職業によってこんなに違う」

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