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【再録】タランティーノvs.本誌「辛口」映画担当の舌戦

ニューズウィーク日本版 / 2016年3月29日 16時20分

 日本映画の伝統なんだ。日本人は、園芸用のホースみたいな太い血管をもってるんだ(笑)。

――いちばんすさまじいと思ったのは、病院の場面。見ていて、思わず座席から跳び上がりそうになった。意識を取り戻したザ・ブライドが、それまで看護師が男たちから金を取って植物状態の彼女とセックスをさせていたと知り、看護師の頭を繰り返し鉄の扉にガンガン打ちつける。

 このほうが、人の腕を切り落とすよりバイオレントだからね。現実味があるぶん怖い。

 いつも言っていることだけど、映画の中で誰かの首が切り落とされても、僕はぞっとしない。紙の端で指先を切って血が出るシーンのほうがよっぽど怖い。

――この病院の暴力シーンは『パルプ・フィクション』でサディストが登場人物をいたぶる場面を連想させる。

 確か、あなたはあの場面が気に食わないと言っていたね。「本当の悪を描こうとしたこの場面だけは、薄っぺらで月並みな描写になってしまっている」というような文章で酷評していた。

――私よりよく覚えている。

(笑いながら)ああ、そういうタチなもんでね。

<参考記事>【再録】マイケル・ジョーダンの思春期、ビジネス、音楽趣味......

――アクションシーンの話をしよう。この作品には、いくつか素晴らしいアクションシーンがある。終盤で、ユマ・サーマンが片っ端から敵をなぎ倒していく。この「青葉屋」の場面の最大の見せ場は、女子高校生用心棒のGOGO夕張(栗山千明)との対決だと思う。

 ご説ごもっとも。僕もそう思うよ(笑)。

――いや、だから私が言いたかったのは、あんなシーンは今まで見たことがなかったということ。

 あそこは、いちばん自信がある場面なんだ。ユマと千明に任せた部分も大きかった。2人ともうまくやってくれた。

――ただし、がっかりする場面もあった。一部の映画では、編集で切り張りしてアクションシーンをつくっているケースがある。最悪なのは『チャーリーズ・エンジェル』。言いたいことはわかる?

 はい、はい、よーくわかる。

――断片の寄せ集めでしかない。要するにインチキなんだ。

 うん、うん、うん。

――あなたの作品がそれと同じだとはいわないけれど、ある意味で同罪ともいえる。最近見たコーリー・ユン監督の『クローサー』は、しっかりした武術指導のもとで撮られたアクションシーンが素晴らしかった。

 すごくいいらしいね。

――本当に目の前で人が動いているんじゃないかと錯覚しそうになる。そんな臨場感は『キル・ビル』よりも強く伝わってきた。『クローサー』のほうが少ないカットで撮っているからだ。

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