北朝鮮の対中非難は今に始まったことではない
ニューズウィーク日本版 / 2016年4月5日 18時33分
今般北朝鮮が暗に中国非難を公開したことを「異例」としているが、それは違う。これまで何度も公開で非難してきたし、特に習近平政権になってからの非難は激しさを増している。中国の視点から、これまでを振り返る。
なぜ日本メディアは「異例」とし、核サミットの習近平発言と結び付けるのか?
4月1日に北朝鮮の朝鮮中央通信が、4月2日には同じく北朝鮮の労働新聞が中国を暗に批判したとして、日本のメディアの多くはこれを「異例」としている。おまけに一斉に、3月31日にワシントン核セキュリティサミットの際に行われた米中首脳会談における習近平国家主席の発言にその原因を求めている。
日本のメディアの、この横並びぶりがあまりに際立って、筆者の目には、これこそが「異様」に移る。
1992年の中韓国交正常化以来、北朝鮮が中国を(暗示する形で)ほぼ名指しで非難するのは、何度もあり、特に習近平政権になってからの非難表明は尋常ではないほどだ。
だというのに、なぜ、今般の非難を、まるで初めてのように「異例」と報道するのだろうか?
当然、意図的だとは思っていない。しかしそうなると、たいへん僭越ながら、もしかしたらこれまでの非難をご存じないのではないかと懸念されるので、中国で報道されてきた、北朝鮮によるこれまでの対中公開非難を、習近平政権以降を中心にして振り返ってみたい。
習近平政権になってからの北朝鮮の対中公開非難
習近平政権になってから、なぜ北朝鮮が中国に対して敵意をむき出しにし始めたかというと、習主席がアメリカとの間に「新型大国関係」(G2)を提唱し始めたからだ。この言葉は、胡錦濤政権最後の年あたりから胡錦濤前国家主席が言い始めたものだが、それを受け継いで正式な国家戦略として唱えたのは習主席だ。
それだけではなく、韓国の朴槿恵大統領は習近平が国家主席になると、早々に訪中し大歓迎を受けている。また習主席は中国建国以来、初めて北朝鮮よりも先に韓国を訪問した国家元首である。
北朝鮮にとって最大の敵国は韓国とアメリカだ。
したがって北朝鮮の金正恩第一書記の激怒ぶりは尋常ではなかった。
習近平政権になってからの北朝鮮による対中公開非難の主だったものだけでも、いくつか列挙してみよう。
1.2013年7月1日午前1時48分 : 北朝鮮側の祖国平和統一委員会
韓国の朴大統領が2013年6月27日に北京で習主席と首脳会談をし、盛大な公式訪問歓迎行事でもてなされたあと、29日に清華大学で講演をした。これに対して、朴大統領が帰国の途に就いた7時間後の7月1日午前1時48分、北朝鮮側の祖国平和統一委員会は、中国を「外部勢力」という言葉で暗示して、激しく非難した。
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