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ブリュッセルが鳴らすサイバーテロへの警鐘

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月6日 13時0分

 ウクライナでも最近、インフラを狙った深刻なサイバー攻撃が起きた。2015年12月23日、ウクライナ国内で6時間にわたり、サイバー攻撃による停電が発生した。いくつかの電力供給会社が攻撃を受け、ブレーカー装置が不正操作された。ハッカーは事前にかなり周到に監視や侵入行為を行い、サイバー攻撃の準備をしていたとみられる。この停電で、22万5000人に被害が及んだ。ハッカーは依然として判明していないが、米エネルギー庁関係者はメディアに対して、ロシアからの攻撃だとの見方を示している。

 ロシアは、各地のインフラにサイバー攻撃を行っている国として悪名高い。2008年には中東で米軍システムに侵入しているし、トルコの石油パイプラインをサイバー攻撃で破壊したこともある。

 言うまでもなく、中国や北朝鮮も、頻繁に欧米各国にサイバー攻撃を仕掛けている国として知られる。例えば中国は、アメリカの原発や鉄鋼関連企業をサイバー攻撃したことで、人民解放軍のサイバー部隊「61398部隊」の将校5人が米政府から起訴されているし、カナダでも電力会社などにサイバー攻撃を行ったことが明らかになっている。北朝鮮は、米ソニー・ピクチャーズに大規模なサイバー攻撃を仕掛けて大きな損害を与えた。エンターテインメントインフラへの攻撃だ。こうした例は氷山の一角だと言っていい。

【参考記事】北の「ドローン部隊」「サイバー部隊」が韓国を襲う可能性

 欧米ではこうしたインフラへの攻撃を、「サイバー・パールハーバー(サイバー真珠湾攻撃)」と呼ぶ専門家もいる。前触れなくサイバー空間から先制攻撃を行って、国家に多大な打撃を与えられるからだ。

 では世界は、こうしたインフラへの攻撃に対してどんな対処ができるのか。その議論は、インターネット発祥の地であるアメリカが牽引している。

 ジョン・ケリー米国務長官は2015年5月に、「サイバー空間にも国際法の基本的なルールが当てはまる」と語っている。現在の国際法に則って、サイバー攻撃に対処すべきだとしているのだ。米国務省は、ダムなどへの攻撃は、国際法に照らして、アメリカに対する武力行使だと認識している。そのほか、原子力施設でメルトダウンを起こしたり、航空管制部への攻撃で飛行機を衝突させることも、武力行使とみなされる。そう考えれば仮にイランのダム攻撃が現実に破壊工作を成功させていれば、国際紛争になりかねない行為だったと言える。

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