予備選で見えてきた「部族化」するアメリカ社会
ニューズウィーク日本版 / 2016年4月11日 19時15分
ヒラリーのイベントで出会ったのは、ハイジとよく似たカテゴリーの60歳前後の白人女性の2人組だ。どちらもシャーロットという名前で高校の同級生だという。ひとりはニューハンプシャー、もうひとりはオレゴンに住んでいる。彼女たちが語るアメリカは、「人種、性、性的指向に関係なく、国民のすべてが平等に扱われ、互いの違いを歓迎できる国」だ。
ハイジとシャーロットたちは、どちらも外国から来たマイノリティである筆者への偏見はなく、フレンドリーだった。ハイジは、iPhoneを取り出して、「ほら見て、素敵でしょう?」と(途中で予備選を脱落した)共和党唯一の女性候補カーリー・フィオリーナと一緒に写っている写真を見せてくれたし、オレゴン州から来たシャーロットも、同じように「ほら、見て」とヒラリーと一緒に写した写真を見せてくれた。
ハイジは、ヒラリーの話題になると「大嫌い!(Eメール疑惑で)逮捕されればいいのに」と顔色が変わる。シャーロットたちは「女性のくせに、女性が中絶を選ぶ権利に反対するのって許せないわ」と中絶反対の保守派に対しては痛烈だった。つまり、信念が違っても、人としてはさほど変わらないのだ。
ヒラリーのイベントに来ていた2人のシャーロット(筆者撮影)
だが、収入格差やマイノリティの増加により、「アメリカはかくあるべき」という定義は、ますます多様化してきている。
ケーシックのイベントで筆者の隣に座った60歳前後の白人男性は、彼女たちとは違った。サンタクロースのような白い髭の彼は、筆者と目を合わせようともしないし、ボディランゲージからは敵意のようなものすら漂ってくる。
質疑応答になって、彼が手を挙げた。
「僕の職場にH1Bビザ(専門職向けの就業ビザ)の外国人エンジニアがいた。ビザは一時的な処置のはずだ。それなのに、僕が職を失って、奴は10年残っている。これは、おかしいじゃないか? 近所には、だんだん外国人が増えてきて、町の雰囲気も変わってしまった。あなたが大統領になったら、アメリカ人が外国人に職を取られないようにしてくれるのか?」。こう恨みを語る男性にとって、アメリカとは「能力にかかわらず白人男性が職を保証されるべき国」なのだろう。
【参考記事】トランプ旋風を生んだ低俗リアリティ番組「アプレンティス」
ニューハンプシャー州で出会った同世代の人々だけでもこれだけバラエティがある。さらに、第二次大戦後のソビエト連邦との冷戦、公民権運動、女性の人権運動を覚えている世代と、それらが「過去の歴史」でしかない世代では、「社会主義」や「平等」の捉え方が大きく異なる。
この記事に関連するニュース
-
「眠れる有権者」ヒスパニックが目覚めた...激戦州アリゾナで語った複雑な本音とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 17時0分
-
「選挙圧勝」でも次期トランプ政権は簡単じゃない なんと共和党は「労働者の政党」になっていた?
東洋経済オンライン / 2024年11月9日 8時30分
-
焦点:歴史的選挙戦戦ったハリス氏、なぜ敗北したのか
ロイター / 2024年11月7日 19時9分
-
【アメリカ大統領選】今さら聞けない! 共和党、民主党の違い ファーストレディの“役割”とは
オトナンサー / 2024年11月5日 7時10分
-
米大統領選で注目「ふたつのジェンダーギャップ」 ハリスとトランプのどちらに有利に働くのか
東洋経済オンライン / 2024年11月2日 17時0分
ランキング
-
1米海軍哨戒機が台湾海峡飛行、中国軍は「大げさな宣伝」と反発
ロイター / 2024年11月26日 18時33分
-
2政府が政労使会議開催、石破首相「今年の勢いで大幅な賃上げを」
ロイター / 2024年11月26日 13時46分
-
3パキスタン、元首相釈放求めデモ激化=首都に軍配備、衝突で死者も
時事通信 / 2024年11月26日 20時41分
-
4【速報】韓国外務省が「日本が見せた態度」への遺憾を日本大使館に伝える 「佐渡島の金山」の追悼式に不参加
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月26日 15時4分
-
5フィリピン正副大統領、対立激化が「殺し屋依頼」に発展 対米中外交に影響も
産経ニュース / 2024年11月26日 19時25分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください