予備選で見えてきた「部族化」するアメリカ社会
ニューズウィーク日本版 / 2016年4月11日 19時15分
問題は、それぞれに自分たちが考える「アメリカ」こそが「真のアメリカ」であり、ほかの「アメリカ像」を受け入れることができない点だ。同じ「アメリカ像」を持つ人と一緒にいれば心地良いし、安心できる。だから、同じ「アメリカ像」を持っている人々が集まって「部族」を作る。そして、それらの部族を代表するのが、今の大統領候補たちだ。
小規模のミーティングで参加者に語りかけるケーシック(筆者撮影)
これまでの予備選の出口調査やソーシャルメディアでの発言から、各部族のアイデンティティが浮かび上がってくる。
<トランプ部族>
地方に住む、低学歴、低所得、労働者階級の白人男性。移民とイスラム教徒に敵意を持ち、女性差別も強い。(最近のCNN/ORC世論調査によると、女性有権者の73%がトランプに反感を抱いている)
<クルーズ部族>
中絶や同性愛に強く反対するキリスト教右派、原理主義者。トランプの支持者よりも、教育レベルと収入がやや高めの白人。
<ルビオ部族>(ルビオはすでに予備選からの撤退を表明)
都市に住む、高学歴、高収入、軍事的タカ派の保守。ビジネス優先。成功を収めた裕福な移民。キューバ系アメリカ人。
<ケーシック部族>
政策とイデオロギー上の保守を信じる古いタイプの共和党員。高学歴、高収入の中道右派。
<サンダース部族>
収入格差がある現状に反発し、古い政治制度を、急速に、根こそぎ変えるべきだと考える理想主義者。30歳以下の若者。社会活動家。白人が多い地域の労働者階級(移民やイスラム教徒への差別心がないところがトランプ支持者とは違う)。労働組合。民主党内の左寄り勢力。民主党員ではない無所属。
<クリントン部族>
フェミニスト、黒人、イスラム教徒、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)、その他のマイノリティ。年配の女性。銃規制推進派。都市に住む高学歴、高収入、高年齢層のリベラル。長年の民主党員。
部族間の争いの問題は、先のルイスによると、政策やイデオロギーよりも「アイデンティティ」のほうが重要になることだ。そして、対立する部族間で敵意が強まることも。
ルイスは、トランプの台頭についてこう説明する。「(ライバルとの戦いが多い)部族では、リーダーを選ぶときの基準は、経験や知恵ではなく力だ。現在私たちが目撃していることの大部分は、基本的にマッチョさ(男らしさ)という下劣なものなのだ。つまり、『あいつらは俺たちをやっつけようと企んでいる。だから、その前に一番タフな奴にやっつけてもらわなくては』という考え方だ。トランプの支持者は、政治の中枢にいるなよなよした候補者の中で、トランプだけを『アルファ(群れを支配する強いオス)』とみなす。それが支持者の主要な論拠なのだ」
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