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挑発行為に隠された北朝鮮の本音

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月13日 20時1分

 首都・平壌を訪れた人々によれば、市内にはレストランやバーが続々誕生し、ドル払いのタクシーが行き交い、膨大な数の市民が携帯電話を手にしている。ブラウンいわく、これらは中間層が育っている証し。中間層の繁栄をもたらしているのは、金の限定的な自由市場改革だ。



 北朝鮮はある程度まで孤立しているが、貿易相手を拡大させており、その範囲はアフリカやヨーロッパにも及ぶという。通商関係にある国からの訪問者、あるいは留学や仕事のため外国へ行く国民も増える一方だ。

 信頼できない国だとの見方に関しても、実際には北朝鮮だけが裏切っているわけではない。核兵器および既存の核計画を放棄するとの05年の約束を破棄したのは、合意直後にアメリカが新たな金融制裁を発動したからだと、ウィットは指摘する。

 12年に米朝が結んだ長距離ミサイル発射や核実験などに関する合意が、北朝鮮の人工衛星打ち上げ(弾道ミサイルの発射実験と技術的には同じ)によってたちまち破られたときも同様だ。ウィットに言わせれば北朝鮮に非はなかった。「人工衛星発射実験は合意の範囲外だった」

米国の誤解と中国の思惑

 米政権の大きな誤解はまだある。すなわち、中国がその影響力を用いて北朝鮮に核放棄を迫るとの考えだ。中国は北朝鮮の核開発に反対し、今年1月の「水爆」実験などを受けた国連の制裁決議案に同意した。だが中国の働き掛けもあって、国連加盟国による北朝鮮産の石炭や鉄鉱石の輸入禁止措置や、北朝鮮への航空燃料の輸出禁止措置には例外規定が設けられた。

 中国がこうした行動に出ているのは、民主主義国家で米軍が駐留する韓国との間の緩衝地帯として、北朝鮮を位置付けているからだ。制裁強化は北朝鮮の不安定化につながり、膨大な数の北朝鮮国民が難民として中国に流入し、米韓の軍隊が国境地帯に兵を進める事態になりかねないと、中国政府は危惧する。
「中国にとって、制裁は北朝鮮を交渉のテーブルに引き戻す手段だ」。米ウッドロー・ウィルソン国際研究センターの北朝鮮担当者で、歴史家のジェームズ・パーソンはそう指摘する。

 北朝鮮の核問題は和平交渉によってしか解決できないとしても、米朝の隔たりは極めて大きい。北朝鮮が核保有国としての地位を要求している一方、アメリカは北朝鮮の非核化を主張する姿勢を変えていない。

 交渉に当たっては、アメリカと安全保障条約を結ぶ韓国と日本が抱く懸念も念頭に置かなければならない。先週、ワシントンで開かれた核安全保障サミットでは日米韓首脳会談が行われ、北朝鮮の核・ミサイル問題が話し合われた。

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