同胞の部屋探しを助ける、中国出身の不動産会社社長(後編)
ニューズウィーク日本版 / 2016年4月21日 18時57分
また、仕事上でも感動的な出来事があった。日本人は最も勤勉だとよくいわれるが、全くその通りだ。先ごろ、同業他社の日本人青年に出会った。青年と契約日を決めたが、その契約前の数日間、青年は欠勤していた。だが契約当日になると、彼は走ってきた。「この2日間連絡が取れませんでしたが、とくに問題はありませんよね」と声をかけると、「問題はないのですが、本当に申し訳ありませんでした。実は母親が亡くなりまして、代行も考えましたが、心配なのでやはり自分がここへ来ました」と打ち明けてくれた。前々日に母親が亡くなったのに、その日、彼はやってきたのだ。私たちはそれを聞いて本当に胸を打たれた。もし家族の不幸のために契約が延期されたとしても、それは容認できることだ。これが、最も身をもって知った日本人の仕事に対する責任感と勤勉さだった。
息子の母校に恩返しの寄付をした
わが家ではみんな、ずいぶん前に日本国籍を取得した。そうしたのは、1つに仕事上の便宜のため、2つには子どもの将来のためだ。息子の拓拓がまだ小さかったころ、幼稚園のクラスメートがある日、私たちを見るなり大声で自分のママにいった。「あの人たち、外国人だ」。それを聞いた拓拓は「ぼくは外国人じゃない。日本人だ!」と叫んだ。その時、私は息子のこれからの成功のため、やはり日本国籍を取得したほうがよかろうと思ったのだ。
拓拓が入学した小学校は、東京・赤羽の地元でも有名なミッションスクールだ。この学校は教師から校長まで、みなすばらしい。貧しかろうが豊かであろうが、分け隔てなく誠意と愛を持って、子どもたちを教えている。私たち夫婦はこの学校を信頼しており、拓拓がここで日々すくすくと成長しているのを見て、感謝の気持ちでいっぱいだった。
ある時、校長と話して知ったのだが、学校は孤児のための児童福祉施設を設立するつもりで、しかし物件を借りるのに資金がなく困っているという。私は妻と、学校をサポートできないか話し合った。当時私たちのビジネスはうまくいっていたし、これも学校への恩返しになると考えたのだ。こうしてわが社の名義で費用の5000万円余りを分割払いにして、学校横に新築の家屋を購入。その後、学校には児童福祉施設として使ってもらうよう、無償で寄付したのである。
すでに数年がたち、あの福祉施設の子どもたちも何学年も入れ替わった。毎年、学校側は感謝状を送ってくれ、そこには新しい入居者のリストも添えられている。たまたま施設のそばを通ると、外からちらりと目をやるのだが、これまで入ったことはない。もう私の家ではないような気がするからだ。学校がこの福祉施設を運営し続けてくれるのならば、私たちはずっと寄付していくつもりだ。
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