リアルなVRの時代がついに到来
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月6日 16時0分
最大の実験場はゲーム
別フロアのVR火星着陸体験は、ハリウッド映画『マレフィセント』を監督した視覚効果の名手ロバート・ストロンバーグが主導した。彼はオキュラスを見学して技術を目の当たりにし、その日のうちに自身のVR会社を立ち上げたという。
ストロンバーグと共に火星体験を製作したフォックスも、攻めの姿勢だ。同社の未来研究担当者(正式な肩書だ)テッド・シロウィッツは、「頭に何か装着していることも忘れるくらいリアルな宇宙体験ができる」と豪語する。
CESに登場した大手メディアはフォックスだけではない。購読者120万人にグーグル・カードボード(スマホに装着して使う段ボール製の手軽なVRヘッドセット)を無料配布して話題になったニューヨーク・タイムズは、昨年制作した9本に加え、今後は毎月2本のペースでVRビデオの制作を進めていくと宣言した。
VRはハリウッドの製作者からNASAの科学者まで夢中にさせている。だが何といっても最大の実験場はゲーム業界だ。「ゲーマーたちに支持を得て巨大市場をつかむ必要がある」と、ダッソーのVR責任者デービッド・ナオンは言う。
スーパーデータリサーチによれば、今年の消費者向けVR市場の売り上げ51億ドルのうち35億ドルがゲーム関連だ。出荷台数ではパソコン用VRヘッドセットが540万台、ソニーのヘッドセット「プレイステーションVR」が130万台になるという。
サムスンのギアVRやグーグルのカードボードといった手頃な価格のスマホ用ヘッドセットの登場で、携帯ゲームもVR普及に大きな役割を果たすことになるだろう。スーパーデータの予測では今年のスマホ用VRヘッドセットの出荷台数は4200万台に達する。
CESでも、VR市場におけるゲームの重要性は見て取れた。ソニーもオキュラスもHTCも、VRヘッドセットのデモンストレーションで使ったのは主にゲームソフトだった。
ソニーのデモで使われた『ロンドン・ハイスト』では、プレーヤーは逃走車に乗った主人公になり、追手を銃で倒していく。オキュラスリフト対応のシューティングゲーム『ブレット・トレイン』では、時間の流れを映画『マトリックス』ばりに遅らせて、飛ぶ弾丸を手で捕まえ、敵に投げ返したりできる。
『トイボックス』というオキュラスリフトのデモ用ゲームも印象的だった。もう1人のプレーヤーと共に仮想空間で卓球をしたり積み木を投げたり、光線を当てて相手を小さくしたりできる。人工的な環境だけでなく、生身の相手ともリアルなやりとりができるというVRの可能性が垣間見えるデモだった。
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