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「ネット言論のダークサイド」を計算機で解析する ── データ分析による報道の技術とその再現性 ──

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月10日 22時31分



仮説検証のための技術

 今回の分析では、複雑な統計解析は行われていません。最終的に得られたデータを可視化して、それを使って仮説が正しいかどうかざっと眺めるような作業になっています。基本的な流れとしては、手元にあるデータに欠けている情報を追加し、複数のデータセットを統合し、フィルタリングし、ブラウザ上で可視化するというものです。これは可視化を伴う分析を行う場合の最も基本的な作業です。ただし今回は比較的大きなデータを使っていますので、一部は商用クラウドサービス上でSpark(後述)を利用しています。ここからは実際に使われたデータやツール、手法について詳しくみていきます。

可視化を目的にする場合の典型的な作業の流れ。基本的に、大量のデータを人間が把握できる大きさまで「濃縮」する作業と言い換えることができる。

使われた技術

 今回使われたツールは、データ分析を業務として行っている方々にはおなじみのものばかりです。例を挙げると:

・テキスト処理のためのPerlスクリプト
・Amazon Web Service (S3, Redshift, EMR)
・Apache Spark
・PostgreSQL
・D3.js
・HTML5

などです。これらのツールは以下のように分類できます。

・データを蓄積して検索可能にする技術: PostgreSQL, S3, Redshift
・データを加工するプログラム: Perlスクリプト
・大規模なデータを複数の計算機で処理する技術: Spark
・それらを実行するための環境を提供する技術: AWS全般, EMR
・最終的なユーザー(今回のケースでは読者)がデータをわかりやすく見られるようにする技術: D3.js, HTML5

これらが実際にはどう使われたのかは後ほど見ていきます。


データセット

今回解析の対象となったコメントデータは以下のような特徴を持ちます:

コメントデータベース

・1/4/1999 ~ 3/2/2016の間にガーディアン紙のサイトにて書き込まれたコメント。ソーシャルメディアなどでの記事への言及は含まない
・コメント総数7,000万件
・うち22,000件が2006年以前に書き込まれた。つまりほとんどがそれ以降のもの
・コメント欄は通常三日間オープンとなり、その間に読者が書き込める。それ以後は読むことのみ可能。したがって、ニュースに対する比較的初期のレスポンスがコメントとして集まる
・コメントは、モデレータにより「ブロックされたもの」と「通常のコメント」に分類されている
・実際のデータはPostgreSQLデータベースに格納
・解析にあたり、実際に新聞社のサイトで使われているデータベースをコピーしてAWS上にアップロード

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