「鉄冷え」どこ吹く風、蘇る中国ゾンビ製鉄所
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月13日 19時9分
コモディティー(商品)価格の下落と需要低迷により、昨年10月に閉鎖に追い込まれた中国の山西中升鋼鉄は、その時点でサンフランシスコからメキシコ国境まで高速鉄道の線路を敷けるほどの在庫を抱えていた。
しかし政府の景気刺激策に後押しされ、中国の鉄鋼価格が急激に改善したことで事態は一変した。世界的な需要低迷とは裏腹に、山西中升鋼鉄は息を吹き返し、10万トンの在庫を売りさばいた。現在も、鉄筋や線材を含む製品を1日当たり約4000トン生産している。
山西中升鋼鉄のように、長年の価格下落で生産停止を余儀なくされた「ゾンビ企業」と呼ばれる中国の鉄鋼メーカーが息を吹き返している。それはまさに世界的な鉄鋼不況を引き起こしているとして、他国が中国に過剰生産の抑制を求めるなかで起こっている。
中国の鉄鋼供給量は世界の半分を占め、世界的な供給過剰にもかかわらず、同国の3月粗鋼生産量は月間最高を記録した。
中国政府は生産能力を削減すると明言しているが、山西省などにある鉄鋼の町が抱える問題は一筋縄ではいかない。同国の経済的台頭においてなくてはならない役割を担ってきた鉄鋼業界を手なずけるのが、政府にとっていかに困難であるかを物語っている。
山西中升鋼鉄のような多くの鉄鋼メーカーは、こうした企業が地域の主な雇用者であり納税者であることを意識している地方政府の圧力を受け、価格が戻るとすぐに生産を再開。その他多くのメーカーも、大量解雇や債務を押し付けられることを恐れた地方政府による支援のおかげで、事業低迷にもかかわらず生き残っている。
製鉄所の生産再開はまた、石炭やコークスの需要を増加させるなど、地元経済への波及効果も期待できる。
「中国では、大人になったらいずれマイホームとマイカーを持たなくてはと言われる。これらは生活の基本的ニーズを保証するだけでなく、鉄鋼需要を保証するものでもある」と、山西中升鋼鉄のChenXuewu氏は語る。
閉鎖していた中国の製鉄所が復活したというニュースは、世界的な供給過剰に対処しようと努力する英国や米国の企業にとっては気の滅入る話だ。
インド鉄鋼大手タタ・スチールは3月、中国製を含む安い輸入品の大量流入が原因で英事業の一部売却を決めたと発表した。
鉄鋼業界の情報ポータルサイト「steelcn.cn」によれば、山西省だけで、過去1年程度の間に少なくとも23の製鉄所が生産を停止、もしくは削減した。そのうちいくつは生産を再開している。
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