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独裁エジプトに再度の市民蜂起が迫る

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月18日 19時21分

 体制側にとって、5年前の春は悪夢だった。だから、その再現は許さないと固く決意している、とザレーは言う。



 地元ジャーナリストの大半は身を潜めている。アルジャジーラ記者の収監以来、外国人記者もエジプトへの渡航や取材に慎重になっている。政治の腐敗を追及したアラー・アブデル・ファタハなど、著名な政治ブロガーも収監されている。

 筆者がエジプトで話を聞いた人々の大半は、抑圧と恐怖による支配は続かず、間もなく転換点を迎えると考えている。5年前の革命を後押ししたのは、物価の高騰とソーシャルメディアの台頭だった。今まさに怒りが充満しており、民衆蜂起に発展するのは時間の問題だ。

 先月19日にはカイロで紅茶の値段をめぐる口論から、警官が露天商を射殺する事件が起こり、デモに発展した。「みんな、こんな生活にはうんざりしている」と、ある女性弁護士は言う。

 やはり女性弁護士のヤスミン・ホッサムは、作品中の性描写ゆえに14年から収監されている作家アハメド・ナジの弁護を引き受けている。

 ナジは禁錮2年を言い渡され、ホッサムらは控訴中だ。「今のエジプトには越えてはいけない一線があり、自由な発言は許されない」とホッサムは言う。「表現の自由はない」

 そんなホッサムにとって、5年前の革命は「私たちにとって最高の出来事」だった。むろん、後悔などしていない。「単純なことだ」と彼女は言う。「今は法の支配がない。彼らは改革者をたたき、外国人を殺し、作家を刑務所にぶち込む。誰も安全じゃない。あまりにも多くの血が流されている」

[2016.5.17号掲載]
ジャニーン・ディジョバンニ(中東担当エディター)


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