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【特別寄稿】TBSアナ久保田智子「私の広島、私達のヒロシマ」

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月24日 11時30分



オバマ大統領に語って欲しいこと

 アナウンサーである私は、言葉を使って表現することを仕事にしてきました。どんなことでも実感を伴わない表現は空々しくなるものです。ことヒロシマのような過去のとてつもなく大きな出来事の実感を受け継ぐためには、被爆の実相に多角的に触れて、自分の実感を、たとえ洗練されていなくても、時に詰まっても、自分の言葉にして伝承していくしかないのだと確信しています。それはあの汗の匂い漂う体育館に始まり、そして、これからできるだけ被爆者の声に耳を傾けていくことが肝心です。

 私はオバマ大統領のスピーチが昔から好きです。そのリズムの良さは心地よく、趣味のマラソンで走っている際にも聞いているくらいです。しかし、多くの映画やドラマでヒロシマの物語がヒロシマのリアリティーを伴わなかったように、オバマ大統領のスピーチもまたリアリティーから遠く離れて、ヒロシマのイメージの増長にならないか危惧します。

 被爆者のリアリティーに触れることで変化し、演説のテクニックを超えたオバマ大統領のヒロシマを聞きたい、そしてそれを世界に波及させて欲しいのです。「何度話しても慣れることはない、辛いです」と、当時の思いを記憶の底から汲み上げながら言葉を絞り出す被爆者のリアリティーと向き合わずに、オバマ大統領の演説が、事前に練り上げられた単に心地いい雄弁なスピーチに終わってしまうのはあまりにも口惜しいです。


久保田智子TBSアナウンサー。横浜に生まれ、中学から父親の実家のある広島に家族で移り住む。2011年より東広島市観光大使。「報道特集」「ニュース23」キャスター、ニューヨーク支局特派員や政治部記者を経て、現在はニューヨーク在住。



 ※当記事は2016年5月31日号
  「アメリカとヒロシマ」特集の関連記事です。

久保田智子(TBSアナウンサー)


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