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もし第3次世界大戦が起こったら

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月10日 17時45分

 では、ウラジーミル・プーチン大統領は金正恩のようにまともに話もできない相手なのだろうか。答えもNOだ。大統領としての行動を分析する限り、物事の分別はついているようだし、ロシアの国益を最優先に掲げる現実主義者だということも読みとれる。

 旧ソ連諸国や旧東欧諸国が次々と欧米主導のNATOに編入され、周りを敵に囲まれた状況なのは確かだ。1952年にはトルコが、冷戦後はポーランドやチェコ、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、バルト3国といったワルシャワ条約機構の旧加盟国がNATO加盟を果たし、ロシア国民の間にはNATOに対抗するよう期待する声も根強い。

【参考記事】ロシア戦闘機がNATO演習に「乱入」

 だからといって「戦争」という手段に訴える必要性があるかと問われれば、そんなことはない。

第三次世界大戦

 とはいえ、仮にロシアとの戦争に突入するとしたら、どんな戦争になるだろう。

 ロシアとNATOの軍事力を比べると、NATOの方が格段に規模が大きい。隊員数はNATOの360万人に対しロシア軍は80万人、戦車はNATOの7500台に対しロシア軍は2750台、戦闘機はNATOの5900機に対しロシア軍は1571機といった具合だ。

 だが、こうした数字だけでは実態はつかめない。

 NATOの軍事力は世界各地に配置されており、ロシアとの差は歴然としている。たとえロシアがバルト三国に一時的に侵攻することができたとしても、長く持ちこたえられるとは思えない。

 また、戦争の質も違う。ミサイルや砲撃の射程が格段に伸び、誘導爆弾の命中率や有効性が上がり、宇宙にまで監視体制が広がったことを考慮すれば、現代の戦争は極めて壊滅的な被害を与え得る。チェチェン共和国の首都グロズヌイやシリアのアレッポなど比較的小規模の紛争でも甚大な被害が出ているのがその証拠だ。

 戦闘部隊の規模は、第二次大戦時と比べると小さく見えるかもしれない。だが死者数や破壊力で見ると、現代の戦争の方が影響力は遥かに大きく、復興にもはるかに長い時間を要するだろう。

 軍艦や空母を世界の至るところへ配備し、戦闘要員も民間人もお構いなしに攻撃するような戦争はまさに世界大戦と呼ばれるものであり、そうした戦いに「戦場」という用語を使用すること自体が大きな誤解を招く。そのような戦いは人類戦争と呼ばれるべきものだ。

核戦争の可能性は低いが

 それは地球上だけで起きるのではない。宇宙空間をめぐる国家間の競争は、サイバースペースをめぐる争いに匹敵するほど激しくなると予想される。各国の政治やインフラ、情報、経済など、様々な領域に関わってくるからだ。

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