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ヒラリーを「歴史的」勝利に導いた叩かれ強さ

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月10日 19時10分

 ニューヨークで圧勝し、翌週にペンシルバニア、メリーランド、デラウェア、コネティカットを押さえて勝利をほぼ確実にした時点で、ヒラリーは政策の違いを含むサンダースへの攻撃をやめた。そして、ソーシャルメディアや選挙集会でサンダース支持者が妨害しても、非難したり反撃したりすることはなかった。

 それはサンダースの支持者を敵に回したくないからだ。本選では、彼らの支援が必要になる。2008年予備選の失敗から学んだヒラリーは、2016年にはどんなに叩かれても過剰に叩き返さないという戦略を立てた。

 08年に「オバマには投票しない」と答えた39%のヒラリー支持者を説得するのに尽力したのは、当時DNC(民主党全国委員会)の会長だったハワード・ディーンだ。彼は「熱狂的な10%のサンダース支持者以外は、最終的にはヒラリーに投票するだろう」と楽観視している 。だが、ヒラリーは決して楽観視しないだろう。特別代議員の動向を伝えたAPの報道のように、綿密な計画を台無しにする出来事は起こり得るからだ。



 今年の予備選では、不満、怒り、憎しみを原動力にしたトランプとサンダースの支持者の暴力行為が目立ったが、ヒラリーは勝利宣言でこう語った。

「私たちは、対立よりも協力のほうが良いと信じています。分裂より団結、憤りより勇気づけること、壁よりも橋のほうがいいと信じているのです。」

「偉大であるためには、卑小であってはなりません。アメリカを定義する価値観と同じくらい私たち国民も寛容でなくてはならないのです。アメリカは、心が広く、公正な国です。私たちは子供たちに『神のもとに統一され、全ての人々に自由と正義が約束された不可分の国(学校や公式行事で使われる「忠誠の誓い」の一部)』と教えます。けれども、今回の選挙は、これまでのような共和党対民主党というお決まりのものではありません。この選挙は異なります。アメリカとはどんな国なのかを決めるものであり、何百万ものアメリカ人が一体になるものです。私たちは(メキシコ人やイスラム教徒を差別するトランプより)まさっているはずです」

 このヒラリーの演説は、人種、宗教、社会経済的背景、性別、性的指向などにかかわらず、アメリカがすべてのアメリカ人にとっての国であることを呼びかけるものであり、トランプやサンダースより大統領としての威厳と説得力があった。

 ここでも明らかなのは、トランプに辟易している共和党員へのラブコールだ。トランプが共和党野候補指名を確実にした日、ツイッターで #RepublicanForHillary というハッシュタグがトレンドになった。そこには「女性蔑視の人種差別者に投票なんかできない」という意見が目立った。ヒラリー陣営は、そういった人々にも「アメリカを誇れる国に保とう」と呼び掛けている。

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