ロンドン独立は無理でも「一国二制度」なら可能?
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月27日 16時37分
【参考記事】イギリスは第2のオーストリアになるのか
それでも、ロンドンがイングランドのなかで浮いているのは明らかだ。若くてバックグラウンドも多様で学歴も高いロンドンの有権者は、過半数が残留に票を投じた。金融街シティーも企業も単一市場に残りたがった。もしスコットランドと北アイルランドのために新しい妥協が図られるなら、ロンドンだけがだめというのはおかしい。
中国と香港の関係から言葉を借りれば、「一国二制度」だと思えばいいのだ。ロンドンは長いこと、自らの税収をもっと自由に伝えたいと訴えてきた。前ロンドン市長で次期首相の呼び声も高いボリス・ジョンソンは、地方財政拡大の信奉者だ。ロンドンは、彼が首相になってもこの約束を守るか見張らなければならない。
またこれは、単一市場について新しい考え方をする好機かもしれない。そもそもの問題は、EUが単一市場には「移動の自由」が必要だと言い張ってきたことにある。
ロンドン「残留」なら移民20万人を受け入れられる
イギリスは離脱と独立という2つの世界のいいところを取れないだろうか。イギリスがEUから離脱してもロンドンはある程度の移動の自由を確保することによって、単一市場に残留するとか。単一市場に残れれば、ロンドンはイギリスの地方から毎年出てくる50万人の人々に雇用を提供し続けられる。年間20万人の移民労働者も受け入れることができるだろう。
そうした仕組み作りを交渉するのは複雑な作業だろう。もっとも、複雑に絡み合ったEUの条約や義務を改定して、イギリスを切り離すのも同様に複雑だと思うが。
ロンドンは、イギリスの首都としての歴史的役割と同時にその世界的地位を維持できるよう国から権限移譲を求めるべき時だ。カーンがそれを望んだわけではないが、カーン市政の成否を決定付ける課題になるかもしれない。
<ニューストピックス:歴史を変えるブレグジット国民投票>
リチャード・ブラウン(センター・フォー・ロンドン研究ディレクター)
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