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「世界最大の書店」がなくなる日

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月28日 16時0分

<「世界最大の書店」とうたわれた米国のBarnes & Nobleが消滅したらどうなるか、が語られ始めた。この企業が消滅すれば、影響は出版社、著者のみならず、アメリカ文化全体にも及ぶとも言われる>
 
 「世界最大の書店」と自他ともに許していた米国のBarnes & Noble (B&N)が、あまり話題にも上らなくなって久しい。負債は嵩み、株は大きく値下がり、有望事業を売却し、店舗では本を減らしてゲームや玩具で埋める、とあっては、もはやデジタルどころではなく、生存の問題だ。そしてB&Nが消滅したらどうなるかが語られ始めた。

B&Nの抜けた跡には空洞が広がる

 かつて、出版の世界には不釣り合いな大規模書店として、出版社に対する絶大な交渉力を発揮して統合を促し、独立系書店を廃業に追いやった(と言われた)この企業が消滅すれば、その影響は出版社、著者は言うに及ばず、アメリカ文化全体にも及ぶだろう、とNew Republic (06/20)のアレックス・シェパード氏は書いている。

 もちろん、B&Nが占めていた売上金額は、ボーダーズの時と同じく、アマゾンや独立系書店、それにターゲットやウォルマートなどの大規模小売店が吸収して跡を埋める。B&Nが果たしていた機能で、容易に代替できないとされているのは、いずれも業界最大であった以下の機能である。

1. 本のショールーム機能(多くの人は、現物をどこかで見なければ買うことはない)
2. 販売力(売上の3割あまりをB&Nに依存している版元も少なくない)
3. 金融機能(前金での大量仕入によって生き延びてきた版元も少なくない)

 とくに3番目が問題だ。独立系書店の発注単位は小さく、24冊入りカートンで「大口」とされるほど。アマゾンなら、と思われがちだが、この会社は発注単位、在庫を最小化しつつ、仕入価格も押し下げることができるので、金融面でのB&Nの代りをする気はないだろう。つまり、B&Nの穴は出版社の経営的ダメージになる可能性がある。

 日本で取次が(まったく)金融をしなくなった場合ほどではないにしても、中小出版社の一部は買収や廃業に追い込まれ、一般的にリスクを伴う出版プロジェクトを避けるようになるだろう。ここまでは多くの出版関係者が一致している。この数年の傾向の延長上にあるからだ。

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