米軍は5年前、女性兵だけの特殊部隊をアフガンに投入していた
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月1日 16時3分
女性兵士を派遣することで、イスラム社会の半数である、現地の女性たちから情報を入手することができる。つまり、イスラム圏の戦闘においては、最前線に立つ女性が不可欠だったのだ。米軍内で、この案に根強い反発があったことや、女性兵に平等な機会が与えられていなかったことを考えれば、皮肉である。
【参考記事】ママ兵士、アフガン派遣の試練
舞台裏で戦争を支える人々をも描くノンフィクション
本書『アシュリーの戦争』が優れているのは、世界最高の米軍の軍事力に支えられた特殊作戦の裏側を、そして知られざる特殊作戦の成功と失敗を、女性のベストセラー作家であるゲイル・スマク・レモンが、参加した女性兵たちの目線で追っているところだ。
女性兵自身が陰の功労者だから、当然、舞台裏で戦争を支える人々にも目がいく。彼女たちの家族、女性兵を育てる教官、後方支援に甘んじるしかなかった先代の女性軍人、アフガン系アメリカ人通訳、野戦病院の医療スタッフ、そしてCSTという特殊作戦プログラムの実現に向け苦労を重ねた軍人たちがそうだ。
そして、女性兵のユニフォーム、基地での食事、戦場でのメイク、トイレ事情といったことまで、我々の知らない戦場の日常をも、時に面白おかしく伝えてくれる。読者はまるでアフガニスタンの前線に立っているかのように、鮮やかにアフガニスタンを思い描くことができる。
そして、女性兵たちが話し掛けるアフガン女性と子供たちのことも――。
失敗から学んでいく米軍の決して美しくはない姿、現代の戦争のあり方、戦場での女性の役割、軍隊での男女の格差について知り、アフガニスタン戦争の行方について考えさせられる一冊だ。
印象的なセンテンスを対訳で読む
最後に、本書から印象的なセンテンスを。以下は、『アシュリーの戦争』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。
●This is an opportunity for failure as much as it is one to succeed. Do not block out voices of opposition, study them and defeat their words and prejudices through brilliant action.
(成功を望む者もあれば、失敗を待つ者もいる。反対の声は遮断してしまわずに、その意図を汲み、その言葉や偏見に、立派な行動で打ち勝つこと)
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