米軍は5年前、女性兵だけの特殊部隊をアフガンに投入していた
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月1日 16時3分
――女性兵だけの特殊部隊が初めて結成されたとき、訓練担当の女性教官が、彼女たちに宛てて個人的に書いた手紙の一文。軍内の意見が二分していたことを物語っているが、これを女性兵はアフガニスタンへ向かう機内で何度も読み返す。彼女たちの後に続く女性兵のために失敗は許されないと決意を新たにする。
●These are the guys I'm going to be out there with. This country is still at war, despite the fact that no one even remembers it.
(「あの人たちと一緒にあたしはミッションに出て行くんだよ。誰も覚えちゃいないかもしれないけど、この国はまだ戦争してるんだから」)
――アフガニスタン派遣直前の休暇中の出来事。ある女性兵が友人や家族と一緒に時間を過ごす。そのときアフガニスタンで米軍に最大数の犠牲者が出たというニュースが流れた。が、誰もテレビに目を向ける人はいない。アメリカが戦争をしていることを一般の人は気にも留めないことを示すシーン。
●Women found them weird for wanting to go to war. Men found them threatening. For a long time Cassie thought this was a reality she alone had experienced, but then she got to know her new teammates.
(同性からは、戦争に行きたがるために変人扱いされてきたし、異性からは、自分たちを脅かす存在に見られてきた。キャシーは、長い間、そういう経験をしてきたのは自分だけだと思っていたが、彼女の新しいチームメートたちもそうだったのだ)
――特殊作戦任務を負った女性兵たちは、単なる同胞意識を超えた固い絆で結ばれている。言葉を重ねなくても自分を理解してくれる仲間に生まれて初めて出会ったのだ。
◇ ◇ ◇
戦争に従事する者としない者の隔たりは大きいが、『アシュリーの戦争』はその溝を見事に埋めてくれる。男ではなく「女」を戦場に送ることで、読者も「相手の立場に立って」戦争の現実を見つめるからである。
『アシュリーの戦争――
米軍特殊部隊を最前線で支えた、知られざる「女性部隊」の記録』
ゲイル・スマク・レモン 著
新田享子 訳
KADOKAWA
©トランネット
トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
http://www.trannet.co.jp/
新田享子 ※編集・企画:トランネット
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