英EU離脱の教訓:経済政策はすべての層のために機能しなければ爆弾に引火する
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月11日 17時10分
<労働党政権の元首相ゴードン・ブラウンは、EU離脱投票の結果は、アイデンティティにまつわる政治の枠組ではなく、経済問題として考えるべしと唱えている...>
「アイデンティティ」政治ではなく経済の問題
先の労働党政権の元首相、ゴードン・ブラウンが「ブレグジットが残した最重要な教訓は、グローバリゼーションは英国の全ての人のために機能せねばならぬということ」というタイトルの記事を書いていた。彼は、EU離脱投票の結果は昨今流行りのアイデンティティ・ポリティクスの枠組ではなく、経済問題として考えるべし。ということを、いかにも彼らしく地味に、いぶし銀のような筆致で描いている。
我々の国のように多様化した国が離脱派のキャンペーンのような内向きの、反移民のレトリックで何年も過ごすわけにはいかない。だが、同様に我々は、この国の鍵を握る心配事を拒否する残留派のタクティクスでは前進できない。(中略)
誰もが認識しているが口に出したくない重要な問題は、グローバリゼーションだ。我々のグローバル経済における劇的な変化のスピード、範囲、規模。その結果、我々が失ったものを最も明らかに表しているのは、アジアとの競争にさらされた製造業の崩壊で空洞化した労働者の街だ。(中略)
グローバリゼーションは抑制可能で、自分たちの利益を守ることも可能なのだと思えない人びとは、当然ながら「人間の移動」を争点にした反グローバリゼーションのムーヴメントに参加することになる。
出典:Guardian:"The key lesson of Brexit is that globalisation must work for all of Britain" by Gordon Brown
英国のユーロ導入を阻止した元首相の提言
しかしながら、ブラウン元首相は、今後の行き方はある。と提案する。
グローバリゼーションだって公平でインクルーシヴなものにできるのだということを我々が示せなければ、反グローバル主義運動があちこちに現れ、政治は国籍や民族、または「アイデンティティ」を軸にして動くことになる。昨今の政治を分けているのは「オープンな世界」か「閉じられた世界」かの概念だと言う人々もいる。
だが、この考え方は、システムからイデオロギーを取り除きたい人々や、グローバリゼーションのアキレス腱である「開き過ぎる格差」と直面したくない人びとの逃げ場であるように僕には思える。
本当に政治を分けているのは、不公平に立ち向かい、うまく管理されたグローバリゼーションを支持するのか、介入を許さない完全に自由なグローバル市場を求めるのか、シンプルに反グローバル主義を唱えるのか、ということであろう。
この記事に関連するニュース
-
結局「ポピュリズム」とは何なのか...世界中が「極端な政党」に熱狂する理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 17時20分
-
これでは「インフレ地獄」に逆戻り…政権交代したイギリスで始まった「増税バラマキ」の大きすぎる代償
プレジデントオンライン / 2024年11月15日 7時15分
-
脱炭素化が「新たな地政学」生む...COP29で「温室効果ガス排出81%削減」表明した英スターマー首相の皮算用
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月13日 16時54分
-
焦点:英財務相、8兆円増税で国再建へ大きな賭け
ロイター / 2024年10月31日 18時23分
-
大増税と20兆円の資本支出に「ギャンブルだ」の声...英国は「割安の罠」から抜け出せるか?
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月31日 17時55分
ランキング
-
1ウクライナ軍が米供与の「ATACMS」でロシア西部を攻撃 ロシア国防省が発表
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 10時12分
-
2中東、レバノン停戦を歓迎=イラン「犯罪者の処罰」訴え
時事通信 / 2024年11月27日 18時31分
-
3イスラエルとレバノンが停戦合意、60日の戦闘停止へ…ネタニヤフ氏「ヒズボラが違反すれば攻撃」
読売新聞 / 2024年11月27日 11時46分
-
4ウクライナ代表団が訪韓、武器支援を要請=報道
ロイター / 2024年11月27日 14時25分
-
5ラオスで“メタノール入り酒”飲んだ外国人観光客6人死亡 宿泊施設オーナーら8人を拘束
日テレNEWS NNN / 2024年11月27日 12時38分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください