「どこかおかしい」世の中を分析する2つのキーワード
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月12日 17時41分
すなわち集団的自衛権の行使容認は、「自国のことのみに専念」することをやめ、世界秩序の構築に積極的に打って出ようとするものだということになる。著者自身も「驚いた」と記しているが、このような逸脱した解釈がいつの間にか広がり、ふと気がつけばあたかも、それが"正義"であるかのように語られていたという現実。それこそまさに「ものさしの不在」と「処方箋を焦る社会」の典型例だといえるのではないか。
もちろんここで話が終わるわけではないのだが、参議院選挙で自公維が圧勝し、改憲勢力の存在感が圧倒的なものになってしまったいま、この部分だけが私の心のなかから離れなくなってしまった。思想の描く輪郭と現実のそれがぴったりと重なってしまったかのような"違和感"が離れないからだ。
しかしそれは、緻密に重ねられた本書のロジックが、現実の恐ろしさを生々しいほどに際立たせてしまっているということの証明なのかもしれない。
『違和感の正体』
先崎彰容 著
新潮新書
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、多方面で活躍中。2月26日に新刊『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)を上梓。
印南敦史(作家、書評家)
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