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ダッカ人質テロの背後にちらつくパキスタン情報機関の影

ニューズウィーク日本版 / 2016年7月13日 16時10分



 パキスタンの諜報機関を名指しで非難しているのは、イマムだけではない。バングラデシュのハサヌル・ハック・イヌ情報大臣も、ISIがJMBと関連のあるイスラム系武装集団とつながっていたと述べ、ISIは「バングラデシュ人にトレーニングを行ってテロリストに仕立て、今回ダッカを攻撃したのだ」と発言している。そしてこの大物2人は共に、冒頭のリズビとは違い、発言を撤回する気配はない。

 こうした発言に対して、パキスタン外務省は、「まったく根拠がなく、事実無根である。パキスタンはこうした疑惑を強く否定する」と主張している。

バングラデシュにパキスタンが介入する理由

 今のところ、今回のテロにパキスタンが関与している確たる証拠は示されていない。だが少なくとも、パキスタンのISIがこれまで、長年のライバルである隣国インドを混乱させるためにイスラム過激派組織を囲い、テロ攻撃を実施させてきたのは周知の事実だ。インドとパキスタンが今も領有権を争うカシミール地方に対インドのテロ組織を動員させている他、2008年11月に少なくとも166人の死者(日本人1人を含む)を出したムンバイ同時多発テロ事件も、インド撹乱を狙ったISIの関与が指摘されている。その動きから考えると、パキスタンがバングラデシュでテロ工作に絡んでいたとしても何ら不思議ではない。

 ではなぜパキスタンはバングラデシュを混乱させたいのか。その背景には、もともと英領だったバングラデシュとパキスタン、そしてインドの成り立ちが関係している。

【参考記事】ダッカ事件「私は日本人だ」の訴えを無にするな

 インドとパキスタンは1947年、英領インドから独立した。独立に際しては、基本的にイスラム教徒の多い地域がパキスタンになり、ヒンズー教徒の多い地域がインドとなったが、バングラデシュにはイスラム教徒が多く暮らしていたため、インドを挟んだ飛び地としてパキスタン領の東パキスタンになった。後に東パキスタンは、インドの後押しでパキスタンと戦い、1971年にバングラデシュとして独立を勝ち取った。インドとパキスタンのライバル関係はよく知られているが、バングラデシュも両国の争いに巻き込まれてきた。

 パキスタンとバングラデシュに挟まれるインドは、バングラデシュがパキスタン寄りになることを望んでいない。東西の両サイドから敵に挟まれることになるからだ。一方で、最大のライバルであるインドが地域で影響力を高めるのを阻止したいパキスタンは、インドの東に隣接するバングラデシュを不安定化してインドから遠ざけ、結局はパキスタン寄りにしたいとも考えている。そういう動機から、パキスタンはバングラデシュの動向を注視している。

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