時速100キロで爆走する「老人用ハンドル型電動車椅子」
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月19日 17時38分
この代歩車について、自動車レビューサイト「易車体験」は試乗体験動画を公開しているのだが、これが爆笑ものだ。2万元(約31万円)するというその車は、軽自動車を一回り小さくしたような外見だが明らかに自動車で、「シニアカー」「ハンドル型電動車椅子」とはほど遠い外見をしている。
走らせてみると、ハンドルはねじ曲がった角度で固定されているわ、サスペンションなしですさまじくガタガタするわ、バッテリー残量表示はいい加減だわ、代歩車用タイヤは修理店にないためにパンクすると修理しようがないわと問題が続出。あまりのすさまじさにコメンテーターは怒るどころか、「笑える車」と結論づけていた。ネットユーザーのコメントも「2万元でこんなゴミは要らないだろ」との声が圧倒的だ。
易車体験のレビュー
なぜ代歩車は消滅しないのか?
代歩車問題を取り上げたCCTVの特番は社会的影響力が大きい。たんに番組が流れて終わりではない。特番の号令一下、あらゆる媒体が一斉になって叩きまくる残酷ショーが繰り広げられる。2013年には、米政府とも丁々発止のやりとりを繰り広げる米アップル社がささいな問題で謝罪に追い込まれたほどだ(参考記事:アップルも撃沈させた中国一恐ろしいテレビ特番、今年の被害者は?)。
となれば、吹けば飛ぶような中小メーカーが製造している代歩車など消えてなくなっていても不思議ではないのだが、放送から2年余りが過ぎた今もいまだに元気に走り回っているという。2016年7月4日付「新京報」によると、北京市郊外でも代歩車はよく見かける存在で、法律上は車ではないことをいいことに一方通行を逆走したり、駐車禁止も守らなかったり、ひどい場合には歩道を走ったりと問題が山積していると報じている。
「中国政府は民主活動家をつかまえるのは熱心なのに、いい加減な車を作っているメーカーを取り締まらないのか!」と、外国人のみならず中国人からも文句の声が上がっているが、消滅しないのは強い需要があるためだ。
代歩車が使われているのは、都市郊外や農村地域の中心部。免許証、保険、ナンバープレート不要というブラックな魅力もさることながら、普通乗用車と比べて激安で、ランニングコストも安く、そしてそれなりに実用に耐える点が郊外や農村の消費者に評価されているようだ。自動車の基準で電気自動車を作るとどうしても価格が割高になってしまうが、ゼロベースから組み立てれば値段を一気に下げることができる。あるいは代歩車という"走る凶器"から後の世界的電気自動車メーカーが出てきても不思議ではない。
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