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歴史感を伴った根拠なき自信を持て

ニューズウィーク日本版 / 2016年7月22日 16時3分

 物欲レスな消費者に対して、企業はどこを狙って矢を放てばいいのか。消費者ニーズやマーケットニーズに合わせたビジネスでうまくやっている企業もあるでしょうけれども、そういう企業は時代のトップに立てません。

 なぜなら今や企業の開発スピードよりマーケットの変化のスピードの方が圧倒的に早いからです。マーケットを見ながら細かく対応していこうとすると、絶対にマーケットの先に出られない。特にソーシャルメディアが発達してからはますますその傾向が強まっています。新商品が出たその日から、あるいは見本市に出た日から、製品レビューがどんどん出る時代です。企画、開発、販売、レビューのプロセスを悠長に構えていては確実に後れを取ります。

 いま広告業界が苦戦しているのは、あまりにもマーケティングの力が強過ぎるからだと思います。こういうタレントが人気だ、こういう表現手法がよさそうだといった分析に力を入れ過ぎた結果、広告がつまらなくなっているのではないでしょうか。今はクライアントの要望を十二分に聞いてからプレゼンテーションするのでは遅いんです。こういうことをやりませんかと働きかけて、クライアントを動かすくらいでなければマーケットの先を行くことはできないんですよ。

 これからの世界を想像し、自分なりの仮説を立てて開発していく。それが商品なりサービスなりをリリースするときの実態に合っているだろうと考えてやっていくしかないんですね。ただし、いい仮説を立てるためには、科学者のように膨大なリサーチが必要になる。今日明日のマーケティングではなく、歴史の流れを考える力が必要になる。これは僕自身が本を執筆する際の姿勢でもあります。視界不良の中でもスピード感を持って突き進まなくてはならない時代、作り手には"歴史感を持った根拠なき自信"が求められるのです。

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(2016.1.7 中央区のグーテンベルクオーケストラ オフィスにて取材)

text: Yoshie Kaneko
photo: Kei Katagiri

株式会社グーテンベルクオーケストラは菅付氏が率いるクリエイティヴ・カンパニー。さまざまな分野で編集、ディレクション、また企業のコンサルティングなどを手掛けている。
http://gutenbergorchestra.com


* スティーブ・ジョブズは生前、人がアップルで働きたいと思う理由について、「アップルでしかできないことがあるからだ」と説明している。(『ジョブズ・エッセンス――世界を変えた6つの法則』(ピーター・サンダー著、満園真木訳、辰巳出版)より)

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