ジャーナリストへの情報提供者に忍び寄るベネズエラ諜報機関
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月3日 18時0分
銃撃犯のフアン・ダビド・オリベロス・ガルシアという名前の27歳の男は、遺書のような動画を残していた。動画の中で彼は「国民のために、国民が苦しんでいる飢えのために」事件を起こしたと証言しており、精神異常者による犯行という主張を否定している。ビデオは公開され、SEBINはこのビデオがどのようにして公開に至ったのかを探り出すための聖戦に乗り出したというわけだ。
解放された直後、カマチョはSEBINのエージェントからこのビデオについて聞かれたとツイートした。このSEBINの興味は、のちにトレスとロハスの尋問においても確認された。
さらに奇妙なのが、ダービソン・ロハスの携帯の押収だ。ロハスおよびロハスの弁護士であるマリノ・アルバラドによると、この捜査を担当している検察官エイケル・カンピオーネからと考えられる指示があり、SEBINのエージェントは携帯を取り上げたという。カンピオーネも司法省もともにこれを否定している。この直後、カンピオーネはこの事件から手を引かされ、カンピオーネの後任は時がくればロハスに携帯電話を返却することを約束した。私がこれを書いている時点では、まだ返却はされていないが。
NGOエスパシオ・プブリコの代表カルロス・コレアは、これをより大規模な反ジャーナリストの流れの一部だと見ている。
"最近では、治安部隊がリポーターの携帯を取り上げ、プライバシーを侵害してリポーターの取材した内容を消去して仕事をさらに困難にすることは当たり前になっている。憲法で定められた権利がまったく尊重されない。このようなハラスメントがはびこる中でジャーナリストの仕事はますます困難になっている。
適正な捜査手続きを踏まえない違反だけでも十分気がかりだが、この問題が実際にあらわにしているのは、明確に憲法28条で保護されているジャーナリストの情報提供者を守る義務への明らかな迫害だ。しかもそれだけではない。ジャーナリストの倫理規定では、ジャーナリストは「いかなる状況においても職業上の秘密を暴露してはならない」と定められている。
倫理規定18条はその点について「ジャーナリストは、情報提供者がその身元を隠すことを要求した場合、いかなる状況においてもそれを明らかにしてはならず、情報提供者の判断を尊重し、あらゆる圧力を拒絶しなければならない」と明確に示している。
政府の反応はどうだろうか?護民官(人民オンブズマン)タレク・ウィリアム・サアブは事件に対しては反対、ただしジャーナリストの情報提供者保護の原則については賛成の立場を示した。他方、ディオスダド・カベジョ*は自らのテレビ番組の中で、当局への協力を拒むジャーナリストたちを攻撃した。
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