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日本のアフリカ市場出遅れ、問題は企業サイドに

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月26日 16時45分

 翻って日本の銀行はこの間、何をしていたのか。平野理事は「不良債権問題でアジアからも手を引いていた。(アフリカに)行けるはずもない」と嘆いた。

 さらに、アフリカとアジアの別なく、現代人の生活に必須なアイテムとなった携帯電話に至っては、日本勢は「ガラパゴスと言われ、(外に)一歩も出なかった」(平野氏)状態だった。



難民・テロを生み出す農業問題

 アフリカの今後の発展を占う上で、農業の近代化が一つのカギと見なされている。アフリカ各国の国内総生産(GDP)と就労者の相当部分を抱えるのは依然として農業だ。例えば、ナイジェリアはアフリカ最大の経済規模と産油量を擁するが、産業別では農業が最大で、GDPの24%、労働力の70%を占める。しかし生産性の低さなどから、ナイジェリアはコメなど主要な食料を輸入に依存している。

 ナイジェリアに限らず、サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)諸国のほとんどが、食料を輸入に頼り切っている。前ナイジェリア農相として同国の農業立て直しに尽力し、アフリカ大陸きっての農政家として知られるアフリカ開発銀行(AfDB)のアキンウンミ・アデシナ総裁は6月13日の講演で、「アフリカは今日、食料輸入で350億ドルを使っているが、2025年までには1100億ドルに拡大すると予想されている」と懸念。「アフリカの食料・農産物市場は30年までに1兆ドルに達すると見込まれている。アフリカにとっての問題は、農業近代化への投資を進めてこの巨大市場に参入するか、あるいは食料の純輸入地域に陥るかのどちらかだ」と強調、危機感を募らせた。

 実はアフリカの農業問題は、経済・社会のさまざまな断面に影を落としている。東南アジアと違い、アフリカで製造業がなかなか根付かない大きな理由として、人件費から住居費まで含めた全般的なコスト高が挙げられる。そしてコスト高の大きな要因となっているのが、輸入依存であるが故の相対的な食料価格高だ。

 また、低い生産性により農村は貧困から抜け出せず、若年層の国外流出を招いている。アデシナ総裁は、「地方の若者は経済的機会が限られていることから、都市部に流出し、欧州に脱出するためボロボロのボートに乗り、多くが途中で死んでしまう。さらに悪いことには、テロリストのリクルートの温床となってしまう」と語る。アフリカの農業問題と、メルケル独首相をはじめとする欧州首脳が頭を悩ませる難民・テロ問題が交錯した瞬間だ。

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