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日本のアフリカ市場出遅れ、問題は企業サイドに

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月26日 16時45分

 だが、アデシナ氏の訴えに呼応する形で、日本企業がアフリカでアグリビジネスを展開できる余地はあるかというと、なかなか厳しいだろう。平野理事は、日本では企業の農業参入が制限されてきたとした上で、「日本でアグリビジネスが生まれたのはここ10年くらいのことだ。今の(グローバルレベルでの)アグリビジネスは、適地があればそこに種子や肥料など全て持ち込み、きちんとロジステックス(物流)を組んで、利益を取るビジネス」と指摘した。残念ながら欧米勢に比べ、日本企業の立ち遅れは著しいようだ。



「アフリカ道場」で胸を借りよ!

 しかし日本勢にとって、全く手も足も出ない状況というわけではない。平野理事は過去10年のアフリカの成長ストーリーでは、「(アフリカの地元)企業がプレーヤーとして大きくなり、ビジネス基盤を作ってきた」と分析。こうした地場企業と日本企業が組む有効性を説いた。

 例えばナイジェリアでは、セメントや製糖などを手掛ける複合企業ダンゴテ・グループの存在感が大きい。米誌フォーブスによると、グループを率いるアリコ・ダンゴテ氏はアフリカ一の富豪とされる。そのナイジェリアの携帯電話サービス市場で、大きなシェアを占めるのは南アフリカの通信大手MTNグループだ。MTNを一例に、アフリカ企業は国境を越えて事業活動を活発化させている。

 既に日本企業と地元企業の提携は始まっている。三菱商事は昨年、ナイジェリアで創業した農産物商社オラム・インターナショナル(在シンガポール)に20%出資。アフリカを含めたグローバル・アグリビジネスの橋頭堡(きょうとうほ)を築いた。

 日本から地理的、心理的な距離感があるだけではなく、アフリカ諸国のカントリーリスクは先進国と比べてはるかに大きい。しかし平野理事は、アフリカを含めた「世界全体で稼ぐという発想をしない限り、グローバル企業にはなれない」と強調。日本企業に対し、「アフリカビジネスで自分たちの力を強くする、いわば『アフリカ道場』と捉えればいい」と述べ、巻き返しを促した。

[執筆者]高岡秀一郎(たかおか・しゅういちろう) 時事通信社外経部記者1998年東京大学教養学部教養学科地域文化研究分科(ドイツ)卒、時事通信社入社。2006年9月~10年11月までフランクフルト特派員、12年4月~16年5月までロンドン特派員を経て現職。


※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。



高岡秀一郎(時事通信社外経部記者)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載


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