いとうせいこう、ギリシャの「国境なき医師団」を訪ねる.1
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月29日 17時5分
前者の、海路を目指す人たちの多くが海難事故に遭って乳幼児が沿岸に打ち上げられるのを、報道で見た人も少なくないはずだ。
【参考記事】地中海で溺れた赤ちゃん、難民の悲劇は止まらず
EUートルコ協定
しかしながら、それが実情どんなことになっているのか、あるいはまさに今年の春に締結された「EUートルコ協定」によって、ギリシャへの不法移民がトルコに再送還されるという約束がどう実現されているのか、俺はくわしく知らなかった(この「EUートルコ協定」については、こちらのニューズウィークの記事をお読みいただきたいのだが、ともかく重要なのは今年2016年3月に"密航業者のあっせんなどでギリシャに渡った難民・移民の人々をトルコへ送還するかわり、トルコ国内の難民キャンプで暮らす人たちを正規ルートにのっとって「第3国定住」の枠組み内で受け入れる "という約束が出来てしまったことだ)。
これでギリシャに渡った人々の夢は断たれた。が、しかしトルコに送られたところでどうにもならない彼らは動きたくない。MSFとしても難民が生まれているからには、彼らの生活を支えようとする。
そんな中、多くの難民がギリシャ国内にとどまって、よりよい決定が世界政治上でなされるのを待つことになった。
それどころか、今日もまた他国からギリシャへと人は渡っているのである。
ということで、またも付け焼き刃の勉強を行った状態でギリシャに四泊(プラス機内泊二日)してきた俺は、実はすでに帰りの機内にいる。
カタール航空でギリシャの首都アテネを深夜に出た俺は、5時間ほどでドーハに着き、その最新鋭のハブ空港から東京羽田へ10時間のフライトをしているところだ。周囲の日本人はヨーロッパのあちこちからドーハでトランジットしているらしく、思い出を語りあうのも億劫な感じでぐったりしている。
飛行機はアラビア半島の右端から、やがてイラン、パキスタンの上あたりを飛ぶだろう。
その間、俺はギリシャで何を見たのか、スマホで撮った写真と細かくつけたメモ帳を照らし合わせて思い出していく。なにはともあれ、俺は憧れのギリシャ旅行がまさか『国境なき医師団』の活動地訪問になるとは思いもよらないまま、アテネで地下鉄に乗りまくり、リゾートで有名な島に渡って大きな難民キャンプの厳しい状況を知ることになるのだ。
出発7月14日
始まりは7月14日の木曜日だった。
俺は昼間からあれこれ仕事をし、くたくたで夜の羽田空港へ行った。フライトは深夜。ドーハ経由でアテネに行くことになっていた。
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