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9月2日も終戦記念日――今夏、真珠湾の記念館を訪れて

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月3日 8時5分

突っ込んできた日本の特攻隊員を水葬に付した

 そんなことを考えつつ戦艦ミズーリ号の甲板を歩いていると、日本人のガイド嬢が声をかけてくれた。彼女は船の傷を指さして、こんな話を語りだした。

 1945年4月11日、沖縄戦のとき、戦艦ミズーリ号めがけて一機の零戦が突っ込んできた。右舷後方から海面すれすれの超低空飛行だったため、レーダーに引っかからず、間近に迫るまで気がつかなかった。ミズーリ号の機関砲が一斉に銃弾を浴びせかけた。機体は左に大きくそれて墜落し、機体の一部がミズーリ号の甲板に引っかかった。駆け寄ってみると、特攻隊員の遺体があった。



 ウィリアム・キャラハン艦長(当時)は、遺体を水葬に付すよう命じたが、一部の乗組員から敵兵を厚遇することに不満の声が上がった。艦長は、「敵兵といえども勇敢な兵士であることに変わりはなく、その栄誉を称えるべきだ」と譲らなかった。

 その晩、米兵たちは徹夜で旭日旗を縫い上げ、翌朝、特攻隊員の遺体を納めた棺桶の上に旭日旗をかけると、礼砲を打ち鳴らし、敬礼して懇ろに水葬に付した。

【参考記事】『永遠の0』の何が問題なのか?

 ガイド嬢は知識豊富で詳細に解説してくれた。しかし口調は柔らかく誠実で、戦艦ミズーリ号を訪れる日本人への配慮を忘れなかった。

 2015年4月11日、日本側の丹念な調査により、水葬に付された日本人兵士が知覧特攻隊の隊員であることが判明した。現在、戦艦ミズーリ号の艦内では「神風特別展示」と銘打って、彼の手紙や遺書、遺品などを展示している。

 太平洋戦争にまつわる歴史の中で、またひとつ、私の心に残る出来事が増えた。

[執筆者]
譚璐美(タン・ロミ)
作家、慶應義塾大学文学部訪問教授。東京生まれ、慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(ともに新潮社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『江青に妬まれた女――ファーストレディ王光美の人生』(NHK出版)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション!――日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、その他多数。新著は『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)。

譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)


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