米国テック一強時代は終わり、米中二強時代が始まった
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月6日 17時20分
一方のテンセントは、アジアのチャットとソーシャルにおける覇者である。Whatsapp+Messenger=Facebookと、Wechat+QQ=テンセントがその分野の世界覇権を争っている。今のところMAU(月間ユーザ)で言えば21億人 vs 17億人とFBがやや優勢だがテンセントの成長率も高い。ARPUは圧倒的にFBが高いが、一方であのスーパーセルをもソフトバンクから買収したテンセントはモバイルゲームで巨額の収益を上げているし、コマースや決済等も強く、総合インターネット企業としての生態系の強さではFacebookに引けを取らない。
以上の結果、AmazonとFacebookはいずれも時価総額で30兆台なかばで、中国テンセントとアリババは20兆円台なかばと、1.5倍前後の差までキャッチアップしている。中国2強の主戦場であるアジア各国の伸びしろを考えると、さらに差が縮まる可能性は大いにあろう。
ただし、である。米国2強はR&D投資に巨額の予算を割いている。AI、VRなど長期で花咲く分野に対していずれも年間で数千億円レベル、日本一国の全VC投資額一年分の数倍の投資を毎年行っている。それに比べると中国2強はそこまで手が回っていない。(むしろ大差で中国3位のバイドゥや新興勢力のLeEco等がAIや自動運転者などへ積極投資をしているが。)中長期で完全に中国勢が米国勢に追いつき追い越すかは、ひとえにR&D投資にかかっている。
R&D投資
そのR&D投資であるが、イノベーションの創出に、もっと言えばその国の経済成長に決定的に重要である。
米国政府の大学や軍事への予算投下によってウィリアム・ショックレーがトランジスタを発明し、そこからフェアチャイルドセミコンが生まれ、フェアチャイルドからインテルもクライナパーキンスもセコイアも生まれ、彼らが投資してアップルやマイクロソフトが生まれる。インターネットの元であるDARPAも国家プロジェクトでありそれによってGoogleもFacebookも米国に生まれる。
このように、R&D投資はその国の次世代の産業創生とそのエコシステム形成および定着に決定的な役割を果たす。
OECDが発表している国別のR&D、すなわち科学研究費予算(官民のそれを合計している)では、中国が3位の日本に2倍超の差をつけて1位の米国に肉薄している。
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