日中両国に利したG20と日中首脳会談
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月7日 17時0分
というのは、フィリピンのドゥテルテ大統領が麻薬撲滅運動により、十分な裁判を経ずに2400人以上の逮捕者を処刑したことに対する「人権問題」を、オバマ大統領が早くから批判していたので、中国は「アメリカとフィリピンの仲」が宜しくないことを見越していたし、3日における米中会談で、オバマ大統領の腰が引けていることを見抜いていたからだ。だから尖閣に対しても、この程度ならば「中国の主権主張のための実行動」を取っていても大丈夫と踏んでいたものと考えられる。
そうは言っても、日中間では、今後は対話を促進していくことで合意しており、2008年以降途絶えていた東シナ海共同開発の問題に関しても話し合いを再開する模様なので、日本側としては「虚(虚勢?)」を捨てて、「実」を取ったと言える。いくらかは改善されると期待していいだろう。粘り強く対話を重ねるのは不可欠だ。
今後の日中関係には日露関係が肝心
今後の日中関係を決めていくのは日露関係だ。
9月4日付の本コラム「G20、日中関係は?――日露首脳会談で日本に有利?」で書いたように、日本は大いにロシアとのパイプを深くし、中国を抑えることに力を注いだ方がいい。
「日本―ロシア―中国」の「三角関係」を大いに利用し、戦略的に動くことが肝要だ。
日米安保があり、アメリカが対露包囲網を形成しようとしているのに、それはまずいだろうという意見もあるようだが、そうは思わない。
終戦から71年。日本は平和を守り抜いてきた。
戦後レジームからの脱却というより、まだ戦後の講和条約である平和協定さえ結んでいない異常さから脱却しなければならないし、中国から常に歴史カードを突き付けられている日本としては、日本なりの独自の「独立した」戦略は、あってしかるべきだと思う。
それは必ず結果的には、東アジアの平和と安定をもたらすことにつながると信じている。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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