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シリアという地獄のなかの希望:市民救助隊「ホワイト・ヘルメット」の勇気

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月13日 18時1分

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 これが『ホワイト・ヘルメット』製作陣の狙いだ。目的は、作品名の元となった組織、ホワイト・ヘルメットの存在を世界に伝えることである。監督のオーランド・フォン・アインジーデルとプロデューサーのジョアンナ・ナタセガラの両者は以前、手がけたプロジェクト『ヴィルンガ』でアカデミー賞にノミネートされた。





 ネットフリックスとのコラボレーションに魅力を感じたのは、同サービスが53カ国/8,300万人という「驚異的な」リーチを誇っており、それによってこの物語が広範囲において視聴されるからだとアインジーデルは語る。

「われわれの願いは、視聴者がこの作品を見て彼らの活動に触発されること、ソーシャルメディアで『ホワイト・ヘルメット』のウェブサイトやトレーラーを共有し、ほかの人々にもこの作品を見るように伝えてくれることだ」とアインジーデルは述べている。「われわれはこの作品が、とりわけシリア人男性に関する固定概念の破壊を促してくれること、そしてシリアのありのままの姿を伝えてくれることを願っている」

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 今週行われた初の特別上映会でスタンディングオベーションを受けた『ホワイト・ヘルメット』は、9月14日にトロント国際映画祭で世界に向けて上映されることになっている。

 ホワイト・ヘルメットの隊員自らが撮影した映像には、空爆の激しい戦火が広がるシリア北部アレッポとトルコ南部の訓練場を行き来する救助隊員たちの、命懸けの日常がとらえられている。部屋でお祈りをして、家族から安否の連絡を待つ隊員らの素顔を映し出す場面もある。

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 トルコへの同行取材を通じて救助隊から信頼を得ていた監督とプロデューサーは、ホワイト・ヘルメットのカメラマンであるハリド・ハティーブにドキュメンタリーの撮影技術を習得させるため、撮影監督とペアを組ませ、高性能の撮影カメラも貸し出した。そうした判断が功を奏し、ハティーブは救助隊員に寄り添って、息をのむほど緊迫した瞬間を見事に映像に収めた。

武器より担架を選んで

 束の間冗談を言い合うことはあっても、隊員たちの頭の中はいつも任務のことでいっぱいだ。「彼らは一瞬たりとも戦争から逃れることができないという現実を伝えたかった」とアインジーデルは言った。「シリアにいれば絶えず爆撃を受け、人々を助け出すために戦火の中を駆けまわっているのだから、まさに毎日が戦争だ。だが訓練を受けにトルコに戻ったときも、常にスマートフォンで現地の情報や人々の安否を確認せずにはいられない。離れていても、戦争の真っ只中にいるのと同じだ」

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