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対中強硬派のベトナムがASEAN諸国を結束させられない理由

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月16日 18時50分

【参考記事】南シナ海の中国を牽制するベトナム豪華クルーズの旅
【参考記事】ベトナムvs中国、南シナ海バトルの行方

 一方の中国政府はASEANと交渉するよりASEAN各国との2国間協議を望んでおり、これまでのところは中国の思惑通りに進んできた。

中国に分断されたASEAN

 ASEAN諸国の足並みはなかなか揃わない。南シナ海問題に関する実績といえば、2002年に領有権問題の平和的解決を目指して中国とASEAN諸国が調印した「南シナ海行動宣言(DOC)」くらいだ。それから10年後の2012年、ASEAN諸国と中国は「行動宣言の実施に向けたガイドライン」に合意したが、いまだ実施には至っていない。

 2016年7月にラオスの首都ビエンチャンで開催されたASEAN外相会議では、中国から多額の経済支援を受けるカンボジアが、ASEAN共同声明で南シナ海問題に言及させまいと抵抗。ASEANは分裂し、法的、外交的なプロセスを尊重するという緩やかな文言すら盛り込めず、仲裁裁判所の裁定にも言及できなかった。

【参考記事】チャイナマネーが「国際秩序」を買う――ASEAN外相会議一致困難

 カンボジアが中国に不利なASEAN共同宣言を阻止したのは、これで3度目だ。ASEAN外相会議を1カ月後に控えた今年6月、カンボジアはミャンマーやラオスと手を組み、中国による南シナ海の軍事化を念頭に「深刻な懸念」を示したASEANの声明への支持を取り下げ、より軟らかなトーンに変えさせた。中国の王毅外相は、カンボジア政府の努力を称賛した。

 はるか昔、2012年にカンボジアの首都プノンペンで開催されたASEAN外相会議でも、南シナ海問題をめぐる関係諸国の対立が激しさを増し、史上初めて共同宣言を採択できずに閉幕した。南シナ海の領有権をめぐる中国との紛争をASEAN共同宣言に明記するよう求めたベトナムとフィリピンに対し、議長国のカンボジアは盛り込むことを断じて許さなかった。

 なぜカンボジアはそれほど中国寄りなのか? 専門家や外交筋に言わせれば、カンボジアは中国マネーに買収されたようなもの、と見るのが一般的だ。事実、中国はカンボジアだけでなく、ミャンマーやラオスでもインフラ事業に率先して多額の資金を注ぎ込み、影響力を拡大している。中国がASEANの切り崩しにこれほどまで努力するのは、南シナ海問題のためだけではない。中国政府が進めるより強引なプロジェクトに対し、ASEAN諸国が結束して異議を唱えるのを阻止するためだ。

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