戦略なき日本の「お粗末」広報外交
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月26日 16時22分
もっとうまい広報の仕方があるのに、とよく思った。2012年の反日デモ以降、日本の要人が少しずつ訪中し始め、関係改善のために動いていた。特に記憶に残っているのが2013年1月に安部首相の親書を携えて公明党の山口代表が北京を訪れた時の光景だ。その日、日本人記者から情報を聞きつけて(通常こうした情報は日本メディアにしか伝わらない)、中国メディアの記者が駆けつけていた。その中にいたフェニックステレビの記者は日本語がわからないので、山口氏の話していることが全くわからなかった。筆者が中国語に訳すのを手伝ってようやく事なきを得た。
大使館の広報担当書記官も会見場に来ていたが、まったく見て見ぬふり。日本について外国メディアに発信してもらおうという戦略的感覚はゼロだ。その体制も整っていないのだろう。例えば、せめて英語の通訳をつけたり、大使館ウェブサイトで会見内容を出したりすれば、いい加減な中国メディアの「誤報」を減らせただろうし、雰囲気醸成に役に立っていただろう。
反日デモの波が中国全土で吹き荒れるなか、在中国日本大使館が呑気にもその微博アカウントでマリモについてつぶやいていた話は駐中国日本人の間でも語り草になっている。当時微博を担当していた館員は、人員が足らないことをぼやいていた。微博に添付する写真はいちいち掲載許可を得なければならなくて大変そうだった。「今は日本の文化を紹介する段階で、ゆくゆくは日中関係についても発信していきたい」と当時の広報担当参事官が語っていたことを思い出す。
その言葉は本当だった。先月11日の朝、尖閣沖で中国漁船が沈没、中国人乗員が救助された件で、中国のメディアがなかなか熱心に伝えようとしないなか、日本大使館は微博と微信のオフィシャルアカウントの両方で、写真付きですぐさまこの件について伝えていた。これは大使館の独自の判断だったということだ。こうした努力は褒められなければならない。
歴史問題などの白熱化を受け、外務省は2015年以降、戦略的に海外へ発信するための予算を200億円から700億円に増額した。シンクタンクとの関係強化、学者招聘、ジャパン・ハウス(日本の魅力を発信することを目的とした海外拠点事業)、青少年交流などに使われているという。
安倍政権になって確かに、外国への訪問が頻繁になり、スピーチライターの谷口智彦氏の活躍により安部首相の海外での演説もずっと印象的なものに変わってきたと感じる。
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