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討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月27日 14時0分

 では、これでヒラリーが再び勢いをつけて、8月初旬に言われていたような「地滑り的勝利」へ向けて選挙戦をリードできるのだろうか?

 そう単純には行かないだろう。



 一つには、ヒラリーの経済政策が十分に説明されていないという問題がある。今回のテレビ討論で、ヒラリーはトランプの経済政策について、「富裕層減税を実施して、社会にトリクル・ダウンを起こす」だけでは成長も雇用増も期待できないとバッサリ批判したが、自分の経済政策に関しては「再生エネルギーを巨大産業に」などという抽象論ばかりで要領を得なかった。

 とりあえず民主党のコアの支持層向けには、それで許されるのかもしれないが、仮に投票日までの間に景気の不透明感が増していくようだと、こうした「のらりくらり」した姿勢では失速しかねない。自分のマニフェストに書いている「21世紀型のグローバル経済を勝ち抜いていくアメリカ」のビジョンをしっかりアピールすることが求められる。

 もう一つの問題点は、「知的労働以外は尊敬されなくなった」アメリカ社会の中で、不満を抱えてトランプに期待を寄せる層は確実に存在する。仮に今回の討論の結果として、支持率のトレンドがヒラリー優位に変わったとしても、この現状不満層のエネルギーが消えるわけではない。残りの選挙戦の中で、その現状不満層の動向はまだまだ予断を許さない。

 今回のテレビ討論におけるヒラリー「先勝」の結果が、どのように各州の世論調査に反映するかが注目される。ここまで差のついた討論の場合、従来の選挙戦であれば世論調査に鮮明なかたちで影響が出るのだが、今回のような特殊な選挙戦の場合はどうなるか、まずは慎重に見極めたい。

<ニューストピックス:【2016米大統領選】最新現地リポート>

≪筆者・冷泉彰彦氏の連載コラム「プリンストン発 日本/アメリカ新時代」≫

冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)


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