「テック界の無印良品」シャオミは何がすごいのか
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月1日 15時31分
【参考記事】時速100キロで爆走する「老人用ハンドル型電動車椅子」
キャッチコピーは日本のラノベから
第二に話題作り、ブランド構築のうまさだ。上述したジョブズ模倣プレゼンもそうだったが、ともかくネットでバズるためのツボを心得ている。主力商品はまずネット直営店で販売されるが、タイムセールの形式が取られており、あっという間に売り切れてしまう。飢餓商法の手法で期待を煽っているのだ。
PM2.5問題が深刻なタイミングでの空気清浄機、日本爆買いツアーが話題になると炊飯器を販売。最近では「Mi Notebook Air」という、どこかで聞いたことのあるような名前のノートパソコンを発売して話題をかっさらった。
また、キャッチコピーにはネットスラングが多用されている。創業以来のキャッチコピーは「為発焼為友」だが、中国人でもぱっと見では意味がわからない人もいる。それというのも「発焼」はもともとAV機器オタクを指すスラングだからだ。訳せば、「オタクのために生まれてきた会社」という意味になるだろうか。
最近多用しているキャッチコピーが「黒科技」(ブラックテクノロジー)だ。オンライン辞書「百度百科」によると、日本のライトノベル『フルメタル・パニック!』の造語で、この世に存在しない架空の技術を指す、転じて「すごい新技術」の意味で使われるようになったという。仲間内でしか通用しない言葉、いわゆる「ジャーゴン」には連帯感を強める効果がある。あえてジャーゴンを使うことで、ターゲットとするネット好きの若い世代に面白がられ、連帯感を持ってもらえる戦略を追求している。
第三に、デザイン性の高さだ。雷軍は「テック界の無印良品」を目指すと明言しているが、その言葉通りシンプルなデザインや色使い、ロゴを目立たせない手法を徹底している。中国で怪しげな電気街をのぞくと、かつてはアップルやサムスンのニセモノばかりが並んでいたのが、今ではシャオミのニセモノや、そのデザインを模倣した関連グッズが少なくない。「テック界の無印良品」のデザイン価値が消費者、そしてニセモノ業者にも認められたわけだ。
中国における「オシャレ」のイメージは日本の影響が強い。欧米の高級ブランドで身を固め、ド派手な高級車を乗り回す。そうした「ファッション=権力と金のシンボル」という時代が一段落した後、日本の存在感が高まった。代表的な事例としては無印良品人気があげられるだろうが、他にも若い女性のファッショントレンドとなっている「小清新」(高級ブランドに飛びつかず、小説など文化的生活とシンプルなファッションを好む)は、日本で一世を風靡した「森ガール」の流れを受けている。
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