「テック界の無印良品」シャオミは何がすごいのか
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月1日 15時31分
中国人の「海外ブランド信仰」が変わってきた
こうした取り組みによってシャオミの爆発的な成長が実現された――で話をしめると美しいのだが、現実はもう少し面白い。他の中国スマートフォンメーカーが手法を模倣することによって、シャオミのシェアは急降下。米調査会社IDCによる2016年第2四半期の中国市場スマートフォン出荷台数シェア調査では、4位に転落している。新機種Mi5sで巻き返しを図りたいところだが、ライバルメーカーのLeEcoがすでにほぼ同スペックだが約3000円安い対抗機種を発表するなど激しい競争が繰り広げられている。
シャオミが再び成長軌道に戻るのかは未知数だが、ライバル企業の成長を促したことで、中国市場全体のレベルが大きくアップしたことは間違いない。また、シャオミによって切り開かれた道は中国人の意識を変えつつあるようだ。
中国には「中国で一番いいものは海外ブランド」という舶来品信仰が根強いが、シャオミとそのフォロワー企業の活躍によってその意識は変わりつつある。いまだに「iPhoneこそが一番いいもの」という意識は根強いが、少なくとも「中国製携帯を持っているのは恥ずかしい」という考え方はかなり薄れてきたし、中国ブランドを熱烈に愛するファンも生まれている。「中国企業はモノマネがうまいが、ブランドもイノベーションもない」というイメージはもはや過去のものとなっている。
【参考記事】模倣(パクリ)は創造の始まり――マイセン磁器の歴史
[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
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