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哲学の使い道を、NYタイムズの人気哲学ブログが教えてくれた

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月3日 16時12分



哲学の解説書でも、哲学史の本でもない

 ニューヨーク・タイムズのネット版には「ザ・ストーン」なる哲学ブログがあり、本書はガッティングがそこに執筆した記事が中心となっている。曰く「数万の人に読んでもらえた。ほぼ毎回、数百件の投稿が読者から寄せられ、わたしは思考を明確にし、発展させ、修正することができた」という、人気のブログだ(現在、「ザ・ストーン」は同紙のオピニオン欄にあり、ガッティングを含む複数の書き手が交替で執筆している)。

 冒頭で触れたのは、第1章「政策論争は不毛か?」の内容だが、本書は10章で構成されている。この本は哲学の解説書ではなく、哲学史を概観しているわけでもない。有名な哲学者ばかりが登場するわけでもない。米国市民にとって身近ないくつかの問題をひとりの哲学者の立場から考察した知的な読み物となっている。

 第2章以降の内容としては、神は存在するのか、科学と哲学はこれまでいかに関わってきたか、資本主義における教育はどうあるべきか、モーツァルトはビートルズよりもすぐれているか、人工妊娠中絶は許されるべきか、など。これらの論点が著者であるガッティング独自の視点から語られており、21世紀にふさわしい哲学の使い道を指南する一冊となっている。

【参考記事】中絶医療施設への銃撃テロ、保守派が抱える闇

印象的なセンテンスを対訳で読む

 最後に、本書から印象的なセンテンスを。以下は『いま哲学に何ができるのか?』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。

●We may believe that emotions and desires, not reason, drive politics. If that's so, why care about facts and arguments? Because among the whirl of our feelings, we possess a desire for our beliefs to be rational, to have support that would convince other sensible people.
(政治を動かしているのは理性ではなく、感情と欲望ではないだろうか。しかし、もしそうであるなら、わたしたちはどうして事実や議論を気にするのだろう。それはおそらく、自分の考えることが合理的であってほしい、ほかの良識ある人々を納得させるようなものであってほしいという願望をもっているからだ)

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