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哲学の使い道を、NYタイムズの人気哲学ブログが教えてくれた

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月3日 16時12分

――議論することそのものにどのような意味があるのか。上の一節はその問いかけに対して考察する部分の書き出しである。

●Yes, public debates are valuable because they give us an opportunity to support our views. But they are equally valuable for the chance they offer us to reflect on those convictions. Through debate we are forced to consider how central our convictions are to our sense of personal integrity.
(公の議論は、自分の見解を支持してもらう機会を与えてくれることにこそ価値がある。だが、「自分の確信について自分自身で深く考える」機会になるという意味でも同じくらい価値がある。議論を通じて、わたしたちは自分の確信がどれくらい人間的誠実さに対する感覚を中心に据えているかをいやがおうでも検討することになる)

――自分ではなんの疑問もなく受け入れていた確信が、よく考えもせずに選択した単なる思いつきだったということは珍しくない。物議をかもす問題については、継続的な熟考や試験に耐えられたものだけが合理的な確信になる。

●Without this kind of hard-won self-understanding, political debate can readily become a mere game, a form of intellectual competition in which I have no ultimate goal except to win.
(苦労の末に手に入れた自己理解がなければ、政策論争などすぐに単なるゲームになってしまう。あるいは、勝つこと以外に最終的な目標がなにもない、ある種の知的競争にすぎない)

――確信がぐらつく場合もあるだろう。考え抜いた末に、「これ以外の立場はとれない」という確信に至ってこそ、実りある議論が生まれる。

◇ ◇ ◇

 ガッティングは、「学術的哲学者が行う専門的で特殊な研究を社会に適用していく」のが自分の仕事だと考えている。本書は「哲学なんてなんの役にも立たない退屈な〈象牙の塔〉の頭の体操だ」という一部読者からのコメントに対する彼なりの回答だという。


『いま哲学に何ができるのか?』
 ガリー・ガッティング 著
 外山次郎 訳
 ディスカヴァー・トゥエンティワン


©トランネット



トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
http://www.trannet.co.jp/


外山次郎 ※編集・企画:トランネット


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