非難合戦となった大統領選、共和党キーマンのペンスの役割とは
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月11日 14時50分
このペンス発言を支持するかという質問に対して、トランプは「ノー」と答えた。つまりアサドは「ISISを攻撃しているから善玉」だとして、アサドとそのスポンサーのロシアをあくまで擁護し続けたのだ。これは大変な「ズレ」だ。アメリカの大統領選で「大統領候補と副大統領候補の間で重要な政策に関して相違がある」というのは少なくとも、20世紀以降では前代未聞だろう。
一体何が起こっているのか?
可能性としてあるのは、背後でペンスを中心とした「何か」が動いているという見方だ。一部の報道によれば、ペンスと夫人は一連のトランプの「女性蔑視発言」あるいは「性的な不規則発言」に対してカンカンに怒っていると言われている。何しろ厳格な宗教保守派で鳴らし、「トランプ候補は3回結婚しているが、私は30年同じ妻と連れ添っている」というペンスには、絶対に許せない種類の発言だろう。
【参考記事】「トランプ隠し」作戦が効いた、副大統領候補討論の評価
一部の報道には、8日の時点でペンスがトランプとの選挙運動をキャンセルするという話もあった。これに加えて、軍事外交において喫緊の課題であるシリア戦略に関して、事もあろうにアレッポでの民間人殺戮を繰り広げている「アサド政権=ロシア連合」をトランプは支持するという。
しかし第2回テレビ討論の直後にペンスは、「トランプ候補の健闘を称える」ツイートを出した。そして一夜明けた10日になってCNNのインタビューに応じたペンスは、「候補辞退など滅相もない」として戦線離脱を否定している。要するに、自分や支持者の個人的な不快感を「封印」して、当面はトランプ支持で進めるというのだ。
ここで浮かび上がってきたのは、3つのシナリオだ。
1つは、このままトランプが「降りもしない」し「浮上することもなく」ヒラリーが勝つ、一方で共和党の議員たちは「分裂選挙」を戦うというシナリオ。ペンスは「選挙戦の体裁を維持する」ために副大統領候補として運動を続ける一方で、トランプとの差を埋めることもしない、ある意味で大統領と議会の分裂選挙における「体裁を整えるバッファー」として機能するということだ。
2つ目は、共和党内が内紛に陥るという可能性だ。今日現在のアメリカの各メディアは、トランプの過去の失言・放言を、目を皿のようにして探している。結果として、もっとヒドい内容が出たりすると、議会の候補たちは耐えられなくなって、さらにトランプへの不支持が出てくるかもしれない。その場合は、多くの党員がトランプを見放す中で、ペンスが共和党の議員や知事候補の「応援団長」を務めることになるだろう。
この記事に関連するニュース
-
アングル:米民主党、ハリス氏指名なら歴史的な賭けに 人種・性差別に挑む
ロイター / 2024年7月22日 18時41分
-
米副大統領候補バンス氏は過激な発言いとわず、投資家・作家として活躍…貧困層から駆け上がった成功体験をトランプ氏評価か
読売新聞 / 2024年7月19日 6時50分
-
米大統領選「バイデン辞退」の一部報道で予想はますます困難に…大統領候補が「辞任」または「逝去」すると選挙はどうなるのか【マクロストラテジストの見通し】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月13日 9時15分
-
焦点:バイデン撤退に備える市場、候補交代で政策に変化なしとの見方も
ロイター / 2024年7月8日 19時3分
-
バイデン氏が大統領選を辞退したら何が起こるか トランプ氏に勝てる若い候補が出現する可能性も
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 10時30分
ランキング
-
1バイデン氏の撤退決断、米主要紙が評価 「勇気ある選択」「米国の最良の利益」
産経ニュース / 2024年7月22日 19時34分
-
2米国初の女性・アジア系大統領を目指すハリス氏、手腕には厳しい評価も
産経ニュース / 2024年7月22日 19時11分
-
3北朝鮮エリートの脱北ラッシュ、なぜ外交官なのか…海外生活で「目覚めた」
KOREA WAVE / 2024年7月22日 16時30分
-
4バイデン氏大統領選からの“撤退表明” トランプ氏「いんちきジョーは最悪の大統領」とSNS投稿
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 11時43分
-
5パリ五輪、4355人を「脅威」として排除 仏内相明かす、大会の治安対策で
産経ニュース / 2024年7月22日 11時27分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください