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南スーダンで狙われる国連や援助職員

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月12日 19時30分



 さらに4日後、80~100人の南スーダン政府軍がジェバのテレイン・ホテルを急襲し、同国のジャーナリスト1人を処刑、5人の援助団体職員を集団レイプした事件があった。アメリカ人が選び出されたという。

 国連安保理の専門家パネルが先月まとめた報告書は、「(テレインでの)襲撃を境に、南スーダン兵士による国際援助団体職員攻撃の残忍さが増した」と結論付けている。「犯人らはよく組織されており、偶発的な暴力・強盗とは考えられない」

 国連にとって厳しい現実を象徴する事件だ。2011年7月にスーダンから分離独立した、世界で最も若い国家である南スーダンが内戦に陥ったのは3年前。以来、国連と南スーダンの関係は日増しに緊迫したものとなってきている。国際援助団体の職員や外交官らが今、まさに南スーダン政府軍の主要な攻撃対象となっているのだ。

 政府軍と反政府勢力との戦闘が再燃し、事態が緊迫化した今夏以降、アメリカなど各国が和平を実現しようとしてきた。しかし紛争当事者である南スーダン政府が外国勢力に敵意を向け、最近ではPKO部隊や外交官を攻撃対象としたことで、戦闘終結は一層困難になっている。

【参考記事】邦人も避難へ、緊迫の南スーダン情勢と国連PKO

 PKO部隊を4000人増派しようというアメリカの計画に基づき、サマンサ・パワー米国連大使らが9月にジュバを訪問、増派受け入れをキールに認めさせた。

大統領より強い部族長老会議

 ところがこの約束は、キールの出身部族であるディンカ族で構成する「ジエング長老評議会」の圧力で、あっという間に反故にされた。同評議会は長年、外国勢力によるいかなる介入にも反対してきた。7月18日にはキールの腹心であるアンブローズ・リーニ・ティークが、PKO部隊の配置は事実上の「宣戦布告であり国家侵略」に等しいと警告した。

 さらに翌19~20日には、ケニア、ウガンダ、エチオピアから新たに部隊を派遣するという国連の計画に反対するため、長老評議会が抗議集会を組織。ジュバから北方200キロに位置する都市ボルでは、国連南スーダン派遣団(UNMISS)施設付近で、4名の国連職員が抗議に参加した数人の若者から刃物で襲撃された。

 安保理の専門家パネルは、キール陣営が故意に市民の間に排外感情をかき立てた結果、一連の武力衝突に発展したと指摘した。

「危険の及ぶ範囲が国連や国際機関で人道支援を行う職員まで広がり、被害件数も増加。暴力の度合いも増している。サルバ・キールを含む南スーダン政府の高官は、国連や国際社会に対して民衆の敵愾心を煽るレトリックを強めている」

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