苦境にある台湾メーカーの未来を「台湾エクセレンス」に見た
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月17日 19時19分
MOSIA(撮影:筆者)
他にも建材メーカーのMOSIAはエコ建材として注目を集める竹のフローリング材を出展していた。気温が高い台湾では竹の成長が早く品質もいいという。「no.30」というブランド名で亜鉛合金製のユニークな灰皿や小物入れを展示していたフリーフォーム(富利豊国際有限公司)は、もともと浴室関係の部品を作るOEM(相手先ブランドによる製造)メーカー。その技術を生かして、デザイン性あふれる小物のブランドに乗りだした。台湾エクセレンスに加え、台湾文化部が主催するクリエイティブ製品の見本市「フレッシュ・タイワン」にも提携メーカーとしても名を連ねている。
no.30(撮影:筆者)
Aidmics Biotechnologyのスマート玩具「μHandy」も注目の製品だ。スマートフォンのカメラに装着できる顕微鏡だが、プレパラートではなく透明なシールを使うことで簡単に保管、観察できる。収集した素材を保存するためのノートもあり、リスの毛などのサンプルまでセットになっている。
μHandy(撮影:筆者)
OEMからオリジナルブランドへ
数々の製品を眺めているだけでも楽しい展示会だったが、加えて全体を通してみると台湾経済の変革が印象的だった。第一にOEMで成長してきた企業が独自ブランドへの転換を図っている点だ。会場の台湾貿易センター・スタッフによると、B2BからB2Cへの転換が台湾全体の課題になっているという。OEMが盛んな台湾ではB2Bが中心となってきたが、中国への製造拠点移転が進むなかで産業空洞化が問題となってきた。高い付加価値を持つオリジナルブランドで製造業復興を図る狙いだ。台湾エクセレンスはその突破口の一つとして位置づけられている。従来は台湾での展示が中心だったが、ここ数年は日本、米国、インドネシア、ベトナム、インドなど海外での展示会が増えている。
第二に中国以外の市場への傾倒だ。2008年から2016年にかけての馬英九政権で台湾は中国と急接近した。積極的に中国との友好姿勢を打ち出すことで、中国市場成長の恩恵にあずかろうという狙いだ。しかしリーマンショックの影響もあり、経済成長率は以前の4~6%から1~2%台にまで低下している。中国との接近によるバラ色の経済成長という馬英九前総統の公約は結局実現することはなかった。中国政府自身も経済的"恩恵"が台湾の一般市民にまで届いていないことを問題視し、台湾青年の中国本土就業を促進するなど新たな経済的取り込み策を検討していると報じられている。
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