管理職が陥る「自分なんて大したことない」症候群
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月20日 16時24分
圧倒的な業績によって実力が証明されているにもかかわらず、自分をまがい物、詐欺師だと感じる「インポスター症候群」が知られるようになったのは1970年代。この症候群に悩まされている人の多さは衝撃的だった。彼らは、自分は今の仕事を誰かほかの人から奪い取った詐欺師であって、この仕事を知り抜いた本物の専門家は別にいると感じる。かなりの要職にある多くの人がこの症状を経験していて、そういう人は自分の業績をただの幸運、チャンスとタイミングに恵まれただけ、周囲の人の働きかけがあっただけ、あるいは事務手続き上のミス(「私を候補者に指名するつもりはきっとなかった」)とさえ言って切り捨てる。そして、自分がなんとか役割をまっとうしているのは、自分が犯したミスが見つかっていないからで、それが見つかるのは単に時間の問題だと言う。
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あなただけが感じるものではない
自分は詐欺師だ、それがばれていないだけだという感覚と闘うには何ができるだろうか? 危険なのは、「自分なんて大したことない」という身を苛まれるような気持ちだけでなく、恥に近い感覚を覚えることだ。こういう感覚は内面的な自己不信に収まらず、興味を引かれる任務やプロジェクトに挑戦しようとする自分を足止めする障害になる。
まず、自分の感覚がどう呼ばれるものであるかをはっきりさせよう。インポスター症候群にかかったのは、あなたが最初ではない。あなたの組織にいる人のなかにも、これを経験している人はいるだろう。つまり、ごく普通の感覚であることを理解し、あなたに自信を捨てさせた、自らの途方もない独創性を一笑に付そう。
次に、この感覚に襲われたときの状況を思い起こそう。インポスター症候群が忍び寄るのは、自分が孤立したと感じるときである。チームのほかのメンバーが同じ種類の仕事をしてもこの症状をあまり感じないのは、自分がまずまず普通に貢献できているとのフィードバックをほぼ常に受けているからだ。責任ある地位を得て、それまでより孤独な職務につくとすぐに、そんなフィードバックはあまり受けられなくなる。これは皮肉にも、周囲の人の目には、あなたが自己充足し、自信に満ちているかのように見えるからだ――あなたには励ましなど必要ないし、批判を快く受け入れる気もないだろうと思われてしまうのだ。組織のトップに近い人や、まさにトップの地位についている人の周囲には多くの場合、よくやったと言ってくれる人も、より建設的な行動に導いてくれる人もいない。
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