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ポスト冷戦の民主党を再生させたビル・クリントン

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月24日 14時33分

 クリントンはアメリカに経済的繁栄を取り戻し、劣勢に立たされていた民主党を再生させ、冷戦後に複雑化する世界状況に適した柔軟な外交政策をとり、後世にその名を残したといってよいだろう。

 試行錯誤を重ねながら、アメリカを新たな世紀へと導くことに成功した指導者としてのクリントンの姿は、継父の虐待から母弟を守りつつ、自らの人生をよりよいものとするために克己心・自立心を持って努力を続けた幼少期の姿と重なって見える。

 他者に対する共感性の高さ、ダメージを受けても即座に再生する強靭な回復力(レジリエンス)、逆境に耐えて好機を待つ忍耐力の強さ、難局に直面しても冷静さを失わず覚悟を決めて事に臨んだ胆力など、クリントンには人格的に優れた面が多かった。

【参考記事】レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた

「じっとしていられない男」――彼を知る人間が口をそろえて言うように、クリントンはエネルギーに満ちあふれていた。仕事に集中しているときは睡眠をとらなくても困ることがなかったという証言さえある。クリントンが「今夜、君に電話をかけるから」と部下に言うとき、真夜中を大分過ぎてから電話がかかってくることなど日常茶飯事であった。



 大統領になってからも仕事に集中しているときは同様の傾向を見せ、ホワイト・ハウスのスタッフの間では、「大統領は不眠症ではないか」という噂が出るほど、活力的だったという。

 クリントン政権で統合参謀本部議長を務め、ジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官になったコリン・パウエルが「何でも吸収するスポンジのようだ」と形容したように、記憶力のよさもずば抜けていた。

 彼の自伝を一読すればわかるが、クリントンは有名無名を問わず、一度でも会ったことのある人物の顔と名前、行ったことのある都市の街並みや風景、はるか昔の地方選挙の思い出にいたるまで、絶対に忘れないのである。

 大統領就任後のあるとき、クリントンはある人物と親しげに話しこんでいた。それを見て側近が尋ねた。

「ちょっと、教えてください。あの人はどなたですか?」

 クリントンはその人物との出会いについて、詳細に説明しはじめた。「1986年に私が全米知事会議に出たとき、教育改革に関する白書を書くように言われてね。彼は某知事のスタッフで、それで〔後略〕」

「なるほど、興味深いお話ですね。あの人とはその後も連絡を取っていたんですね?」

 クリントンは首を横に振った。「いいや。それっきり会ってない」

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