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ヤクザになった理由を7人の元暴力団員に聞くと...

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月28日 12時13分

 著者の調査によると、暴力団加入経験者には、「単身家庭」(離婚などに起因する一人親家庭)、共働き家庭や長期出稼ぎ(出張)家庭のように機能的観点からみた「擬似単身家庭」、家庭内暴力が絶えない「葛藤家庭」、学童期に門限がないなど親が躾や勉強の面倒を見ない「放置家庭」、親と子の会話が極めて少ない「意思疎通上の機能不全家庭」などの出身が多いのだそうだ。もちろんそうした家庭に育った人のすべてがそうなるわけではないが、その確率が高いということである。

【参考記事】子どもへの愛情を口にしながら、わが子を殺す親たち

 事実、著者が話を聞いた7人の元暴力団員も、総じてそのケースにあてはまる。



●Kさん(元暴力団幹部) Kさんは京都市内の生まれです。両親(義務教育卒)は健在で、父親は戦中、舞鶴海軍工廠に勤め、戦後は映画会社に勤めるサラリーマン、母親は専業主婦であり、家庭菜園などを営んでいたそうです。 Kさんは小学校時代を回想し、それが暗黒の時代であったと言います。「(不満は)暴力や。暴力。ホンマいっつも思いよった。こんな家庭居りたないてな」「オヤジが酒飲みでなぎょうさん酒代に消えよったんや」 このように家庭への不満を露わにしました。――両親との関係はどうでしたか?「(両親から)そんな構ってもろうてないな」「(会話は)オカンとはな。オヤジとはせえへんかったな」――家庭内の葛藤は?「夫婦喧嘩言うよりあらあ虐待や。それがわしがヤクザなろう思うた原因の一つやな。(中略)ヤクザなってこのクソオヤジ見返したろう思うたんは確かや」(62~64ページより)

 Kさんのみならず、他の6人もなんらかの形で家庭がうまくいっていなかったことを明かしている。そして、それがヤクザという道を選ぶことになったとも。

 また、同時に学校や仲間との関係性にも注目しているため、どちらかの方向に偏ることのないバランスのよさを感じさせる。そこに、本書の意義があるといえるだろう。

 冒頭で触れたとおり、「ヤクザ」という単語に期待したくなるような派手さはないし、それどころか地味な内容。個人的にはもう少し平易な表現を使ってほしいとも感じたが、とはいえテーマ設定と視点の的確さは申し分ないだろう。


『ヤクザになる理由』
 廣末 登 著
 新潮新書


[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、多方面で活躍中。2月26日に新刊『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)を上梓。



印南敦史(作家、書評家)


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