台湾の国民党は中国共産党に降伏宣言をするのか?――洪秀柱・習近平党首会談
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月1日 11時0分
ただし、「和平協定」を締結してしまうと、「92コンセンサス」の「一中各表」は意味を成さなくなり、新たな両岸関係が生まれ、実質上は「中台統一」に至ってしまう。
野党である国民党党首には「国家」としての権限はない
11月1日午後(このコラムが公開されるであろう日の午後)、洪秀柱主席は習近平総書記と、「国共党首会談」を行なうことになるが、その会談の場において、「両岸和平協議」に触れ、かつ国民党の綱領に「和平協議」という文言を入れたことを紹介するであろうと言われている。
「和平協議」は、「国共内戦の講和条約」のような意味を持ち、「内戦は終わりましたね」ということを確認し、実質上、「国民党軍が共産党軍に敗北した」ことを認めることになる。
ただ、国民党はいま政権与党ではないので、野党がどんなに討議したところで、それは「党同士」の「党首会談」の域を出ない。「国家」として、何かを決議する権限は、国民党にはないのである。したがって、中台間において法律的な効果を発揮することはないと言っていい。
中国の軍事覇権を正当化させる台湾国民党の親中路線
台湾の世論では、「敵の軍門に降るのか?」とか「チャイナ・マネーに心を売るのか?」といった批判がある。
そもそも、「日中戦争の時に勇猛果敢に戦ったのは中国共産党軍であり、国民党軍は逃げ回っていた」とする現在の中国共産党に対して、国民党が抗議をすべきなのに、その共産党に迎合するというのは何ごとかという民意がある。
しかし、党としての立場となると、そこは微妙に違ってくる。
民進党は国民党を礼賛したくはないので、「いや、国民党こそが中心になって戦ったのであって、共産党軍を率いていた毛沢東は、日本軍と共謀していたではないか」とは言いたくない。国民党に有利になるからだ。
国民党自身が中共政権に向かって「お前はおかしいだろう!歴史を捏造している!」と叫ばないとすれば、習近平政権としては嬉しくてならないだろう。ますます中国人民および国際社会に向かって、「抗日戦争の中流砥柱(中心となって支える大黒柱)は、中国共産党軍であった」という歴史の捏造を、堂々と行う環境が整ってくるからだ。
中流砥柱となって戦った国民党がそれを否定しないのなら、他の国が何を言っても怖くない。
「中国共産党軍こそが、反ファシズム戦争のチャンピオンだった」として、昨年は建国後初めての軍事パレードを行った。
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