将棋界も参考にすべき? チェスの不正行為分析の考え方
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月1日 17時50分
将棋もこれから、他の棋士、例えば羽生とコンピュータの指し手が一致しただの、大山やら米長やら、あるいは江戸時代の名人やらとコンピュータの指し手の一致率が高いだのという話がぼろぼろ出てくると思うが、それは当然のことなのだ。
似たような話はリトルウッドの法則としても知られている。100万回に1回しか発生しない稀な事象を「奇跡」と定義し、1秒に1度試行が行われると仮定する。人間はだいたい1日8時間活動しているとすると、35日間で100万回試行が行われることになる。言い換えれば約1ヶ月に一度、我々は(理論的には)奇跡を目撃することになるのだ。
一致率の高さだけではチートの確証とは言えない
もちろん、以上の話は将棋にチートがないということを意味するわけではない。今回問題になっているのは三浦九段だが、個人的には、他にもトイレかどこかでチートをしていた棋士や奨励会員はいると思う。しかし重要なのは、チートの有無を科学的な議論、あるいは(まあ現実の裁判はそこまで厳密ではないかもしれないが)法廷での論争にも耐えるレベルで立証できるかということ、そして、それは一致率だけでは理論的に無理ですよ、ということなのだ。
ところで、先ほどの例で、あらかじめゴルファー1万人の中の10人に何か印を付けておいたとして、その10人のうち一人がホールインワンを達成したとしよう。この場合の確率は、印のつけ方とホールインワンに関係がなければ10/10,000×1/5,000=1⁄5,000,000、期待値は10,000×10/5,000,000=1/500ということになる。期待値が1/500、すなわち0.002回、言い換えれば1万人を500回集めてようやく一度起きるかどうかという出来事が実際に起こったとすると、常識的に考えてもかなり稀な出来事だし、偶然とは言い難い。仮説検定で有意水準5%という話がよく出てくるが、これは大ざっぱに言えば、偶然で説明できないことが起こる確率が1/20(ないし1/40)ということだ。1/500はそれよりはるかに小さい確率ですね。にも関わらず実際にそのような出来事が起こったとしたら、それは偶然とは考えにくい、ということになる。チェスや将棋であれば、それはチートの存在を示唆することになろう。
以上の話を踏まえてリーガンの主張をまとめるとこうなる。
1. 一致率の高さだけではチートの確証とは言えない。90%だろうが100%だろうが同じ。
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